↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/31

第19話:姿を消した人柱ノ神

 ウエキさん達に付いていった私は、ある家の前に立っていた。

 その家は大きな日本母屋で、素人目に見てもかなり年季の入っているものだと分かった。

「ここ」

「ここ? ここって確か……ナオビさんのとこじゃない?」

「お知り合いなんですか?」

「うん。うちの店をたまに使ってくれるお客さんなんだ」

 コトヒラさんは扉まで近付くと、そこに付いていた呼び鈴を鳴らした。

 それからしばらくすると扉が開き、中から一人のお爺さんが出てきた。

 顔にはいくつもの皺が刻まれており、相当長生きな人だというのが分かった。でも、ここに居る他の人達と比べても明らかに長く生きている様に感じられた。

「……君達は」

「ナオビさん……金刀比羅です。私がここに来た理由、分かりますよね?」

「……ああ。入ってくれ。詳しく話そう」

 そう言うと、ナオビさんは私達を家の中へと招き入れた。


 家の中は外観と同じ様に古い日本母屋そのものだった。

 私達は居間へと通され、そこで向かい合って座った。

「さて……君達が来たのは、彼女の事だな?」

「ええ。御七夜奈々……彼女の行方について聞きたいのです」

 ウエキさんがナオビさんに尋ねた。

「えっとナオビさん? その……御七夜って子はどんな子なんですか?」

「君は、確かあの花屋の……どうしてここに来たんだ?」

「あぁ~それはぁ……まあ付き添いみたいなもので……」

「そうか……。そっちの子は…………ああ、そうか……そういう事か……」

 ナオビさんは私を見て何かに気付いた様だった。私はこちらを見てくるナオビさんのどこまでも深い瞳に吸い込まれそうになり、少し体が強張ってしまう。

「……御七夜の事、だったな。君達は、どこまで知ってるんだ?」

「何も知りません。ただ、目が見えなかったという事だけです」

「……それは、我々のせいなのだ」

 どういう事だろう……? 目が見えなくなったのがナオビさん達のせい? って事は、神代テクノロジーが関係してるって事なのかな……。

「私達は、切迫した状態だった。それは理解してもらえるだろうか?」

「……私は……ただの神格を持つ者の一人に過ぎません。あなたが何をしたかは、私には分かりませんし、非難は出来ません」

「ちょちょ、ちょっと待ってもらえません? ナオビさんは何なんですか?」

「そうか。君は知らなかったんだな。私は……神代テクノロジーの人間だった。まあ、その名前も私が抜けてからの名前だがな……」

「ナオビさんが……神代の……?」

 そういえば、ウエキさんが埋められてたのには神代テクノロジーが関係してたんだよね……。あの紙に書いてあった計画の事、聞くなら今しか無いかもしれない。

「あの……いいですか?」

「何だね?」

「えっと……神奈備計画って何なんですか?」

 ナオビさんの眉が少し動く。

「どこで……それを聞いたんだ?」

「えっ……えっと、あの……」

 私はウエキさんを掘り返した時の事に見た事をナオビさんに全て話した。ナオビさんは終始黙って私の話を聞き続けてくれた。

「そうか……そういう事か」

「……ナオビさん。詳しく話してくれませんか? あなたはうちのお客さんですけど、この件については私に話す義務がある筈です」

 ウエキさんは真面目な表情でナオビさんを見つめていた。

「そうだな……。ただ、一つだけ信じて欲しい。あれは私が指示した事では無いし、一切関わっていない」

「例えそうだとしても、答えて下さい」

「ああ。まず『神奈備計画』の目的は、常世とこよ御霊代みたましろや依り代を擁した領域に変化させる事だ」

 確か本で読んだ情報によると、常世は死後の世界の事らしいけど……。もしかして、ここの事を言ってるのかな?

「それは……黄昏街の事ですか?」

「ああ。忘れられてしまった者達が集う場所……終わりを待つための場所……。そうした者達のためにこの街を作った。だが、最初はただそれだけの街だったんだ。人も物も神も皆同じ場所として……」

 ナオビさんは私の方を見る。

「……そうだな。それだけでは分かりにくいか。少し、昔話をしよう」

 そう言うとナオビさんは、話し始めた。

 ナオビさんの話によると、元々神代テクノロジーは日本陸軍所属の特殊部隊だったらしい。そこに所属していた人達は、日本が戦争で勝てる様に様々な人体実験を行ったらしい。そして作られたのが、私がかつて出会った由紀さん達らしい。しかし、終戦と共に部隊は解体されてしまったらしい。

「……という訳だ」

「えっと……じゃあナオビさんは神代テクノロジーの人では無いんですか?」

「ああ。日本の敗北を認められなかった者達が神代テクノロジーを結成した。目的は……日本を世界最高峰の国にする事だ。他の全ての国を支配して……」

 ナオビさんの話が本当だとすると、アサヒさんの真の目的はそれなのかな? それとも、ただ神代テクノロジーを利用してるだけ……?

 コトヒラさんが口を開く。

「植木、納得出来た?」

「……うん。まあとりあえずはね」

「ナオビさん。御七夜の事について教えてくれますか?」

「ああ。あれは、言うなれば決戦兵器……切り札だ」

「切り札……?」

「あらゆる怪異や神性を取り込み、それらの力を完全に制御する生体兵器『人柱ノヒトハシラノカミ』。我々はそれを作ろうとしていた……」

「それが……御七夜ですか」

 ナオビさんは立ち上がると、後ろに置かれていた箪笥を開け、中から一本の巻物を取り出した。

「ここに、彼女に施した手術や術式が全て書かれている」

 コトヒラさんはナオビさんが差し出した巻物を受け取ると、中を確認し始めた。

「…………そういう事ですか」

「あの……どういう事なんですか?」

「人は七歳までは神の子供って言われてる。ここに書いてある事によると、彼女には目が見えなくなる様な手術が施されてるみたい。光を失う事によって本来見えないものを見れる様にするのが目的みたい」

 どうやらオシチヤさんは由紀さん達と同じ様に変な力を与えられたらしい。でも、ここで一番問題なのは、どこに行ってしまったかという事だろう。

 ナオビさんは腰を下ろす。

「あの、ナオビさん。オシチヤさんは今、どこに居るんですか?」

「……最近は見ていない。気配も感じない。もしかすると、出て行ってしまったのかもしれない」

 確か、コトヒラさんが神社で見つけた絵馬を書いたのがオシチヤさんらしいんだよね……。でも、ちょっとおかしいなぁ……? オシチヤさんは皆がここを出られる様に望んでた。それなのに、まだ何も起きてない。それどころか、オシチヤさんの姿がどこにも無い……?

 ウエキさんが口を開く。

「何か知らないんですか?」

「すまないが分からない。もしここを出て行ったのであれば、それはそれでいい。ここに居るよりはずっと……」

 巻物を見ていたコトヒラさんは巻物を閉じる。

「……分かりました。何も知らないのであればいいです。そろそろ帰らせていただきます」

「あ、えっと……ありがとうございました」

「……じゃあナオビさん」

 私達が立ち上がり立ち去ろうとすると、ナオビさんが呼び止めた。

「待て」

「何ですか?」

「そっちの君、名前はなんと言うんだ?」

「わ、私ですか? 三瀬川賽ですけど……」

「賽……か」

 ナオビさんはゆっくりと立ち上がると、こちらに近寄ってきた。

「三瀬川、恐らくだが……君を捜している者が居る」

「だ、誰ですか……?」

「確か……縁、と名乗っていたか……」

「えっ……!?」

 まさかユカリちゃんがここに来てたなんて……。もしコトヒラさんが縁を切ってくれなかったら、ここで鉢合わせになってたのかな……。もしそうなってたら、ユカリちゃんは何をして来ただろう……?

「気を付けろ……。彼女はどこかおかしい。体全体から、何かおかしな気を放っている」

 ユカリちゃんの様子がおかしいのは気付いてたけど、気……? そんなの出てるのかな……?

「は、はい。気を付けます。それでは……」

 ナオビさんと別れを告げた私達は、家から外へと出て行った。


 外に出ると、コトヒラさんが私に話し掛けてきた。

「三瀬川、心配はしなくていいから。私が縁を切ったんだから、鉢合わせはしないよ」

「えっ? ええ」

 そう。コトヒラさんに縁を切ってもらった。でももし、全てが終わった時、ユカリちゃんと縁を戻せなかったら……その時はどうすればいいんだろう……。

 そんな事を考えていると、ウエキさんが私の頭を撫でる。

「三瀬川ちゃん、大丈夫だよ。何とかなる。何とかするよ。ね、一旦ドードーちゃんの店に戻ろうよ。やるべき事はそこで話そ?」

「は、はい。そうですね……」

 私はこれからの事を話し合うために、ウエキさん達と共にドードーさんのお店へと帰っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。