マルチ商法
こっち(就活編2)
履歴書で落とされたり
「経験ないんですか・・・」と未経験可と書いときながら面接で言われたり、ひどかったのは集団面接で面接官に
「営業経験ある方は挙手して下さい」
と言われ、僕以外の全員が挙手したりして面接中に不採用が分かる瞬間も多々あった。ウソで挙手したら良かった。面接でウソは大事かもしれん。
手応えを一向に感じられず2か月が立った。もう長袖じゃないと寒い10月。ただ、夏場に比べて面接は楽になった。夏のスーツは地獄だ。母親からは
「あんたみたいなん取ってくれる企業は無い。専門学校に行け!」
父親からは
「そんな年で何の仕事するか考えられて羨ましいわぁ」
と嫌味たらしく文句を言われ、さらに母親は
「あんたはみんなから笑われてる。人の不幸は蜜の味や。笑われんようにしなあかんで。舐められてこき下ろされて終わりの人生や。友達からも嫌な事あった時に木村思い出したらもっと下おるわって思われてるんじゃ」
「そんな事はないやろ」
「いーや、あるね。バカに出来る奴を下に置いときたいんや。それが人間や」
そんなん言われたら死にたくなるが、駅に行ったら生きようとする。
「村野君なんて見てみぃ。子供3人おんねんで。あんたは何や。彼女の1人も連れて来んと」
「・・・」
「一生何も言わん人生でおれや。死ね!」
いつもいつもこの人は生きる気力を失わせてくれる。なぜか村野に腹が立って来た。別のクラスで喋った事ないけど。中学の時に4番サードでモテモテやったな。死んだらいいのに。
久しぶりに夢に老婆が出てきた。
「専門学校に行ってる間も駅には行かん?」聞いてみると
「いや、ダメじゃ。そんな時間は無い。正社員しか脱出は無理。専門学校を許すとな、ずっと専門学校行ったり職業訓練校行ったりするじゃろ。時間稼ぎしよる。後な、マスコミが報じてないだけで、結構な若者死んでるで」
「たまに報じてるじゃないですか」
そうだ。若者の怪死はたまに取り上げられてる。
「あれが全てだと思うか?報じたらヤバい事もあるんじゃよ。今、裏で警察とか研究者とか精鋭部隊が調査してるよ。死体解剖とかして。意味ないのにヒヒヒ」
老婆は不気味に笑う。
「そうだ!」
「何じゃ?」
「どうやって夢に出てくるんですか?」
「もう、出んとこか」
「それは困る・・・」
「じゃあ聞くな」
そう言って老婆は消えた。正社員しか脱出の道は無い。
次の日、森田からメールが来た。
『今日の昼間ちょっと会わしたい人がおるねん。行ける?』
『行けるよ』と返した。ハンバーガー屋で待ち合わせる事になった。
仕事紹介してもらえるんじゃないかと期待した。ありがとう。森田。
ハンバーガー屋に着くと森田とスーツを着た30代男性が座ってた。ピシッとしてる。
「こんにちは今野です。私こういう仕事をしてまして。あっ、どうぞ、ポテト木村さんも食べて下さい」
渡された名刺を見るとサプリの会社だった。
「このサプリを多くの方に売って頂くと自分にお金がドカッと戻って来ます」
一気にきな臭くなって来た。
「森田はやるの?」
「副業でやりたいと思ってるねん」
「・・・え?」
「もちろん、最初は戸惑います。けど、ウチはマルチじゃありません。営業でノルマを大幅に超えると給料が高く貰えるでしょう。それと一緒でウチは営業職です」
「固定給はあるんですか?」
「はい、あります」
「ホンマですか?」
「ただ、最初に30万払ってサプリを買って頂かないといけません」
「30万!!!」
「すぐ、戻って来ますよ。1人に売ればもう、25万戻って来ます。2人に売ればプラスですよ。簡単でしょ」
「2人も売れますかね?」
「木村さん。この国はラッキーな事に高齢化になってる」
「年寄りに売るって事ですか?」
「はい。この商品は健康食品ですので。食欲の無い方や食べ物が規制されてるお年寄りの方が食べると良いんですよ~」
「・・・俺は止めときます」
「何でよ!」森田は驚いた。
「30万も無いし、営業もした事ないし」
「キャッシュで借りたら良いんですよ」
「そんな恐い事したくない」
「実際キャッシュで借りてすぐに返した方もいますよ。後は、高い車乗ったりモデルみたいな人と付き合ったりしてる方もいます。金持ちが優遇される国です。金持ちになって優遇されたいと思いませんか?」
「すいません。トイレ行かせて下さい」
トイレに向かう。どいつもこいつもクソだ。森田までクソにならんで欲しかった。
別に用を足す気は無かった。1人の息抜きの時間が欲しかった。ハンバーガー屋は個室便所しかなくこもった。3分程こもろうかと思った。
!!!
まただ。また開かなくなった。なぜだ。就活中なのに。
「チーン」
となった。久しぶりの光景が目の前に広がった。




