人体模型来店
あっち
最悪だ。また命を懸けた勝負をしなきゃならない。
柴君や赤木さんや駅長の姿は見えなかった。駅には僕しかいない。客もいない。
「・・・バヤルララー」
呪文を唱えてみる。
「ガコッ!」
と台所の下の引き出しから音が聞こえた。開けて見ると包丁やフライパンが入っていたがこれは違う。1つ包みにくるまれた物があった。包みを剥がしてみた。
吹き矢が入っていたが矢は1本のみ。メモ書きもあった。
「絶対吸うな。吹け!」
とあった。それを手に取る。帰ろうとトイレに行ったが、やはり帰れない。
客を倒さないとダメなようだ。
「♪ピンポーン」
来客の合図が鳴った。いよいよ始まる。僕は休憩所から受付へと向かった。
「!」
人体模型がカウンターの机越しに立っていた。臓器がブロック事になってるタイプだ。どこが心臓でどこが胃か分かるやつだ。心臓がドクンドクン動いている。恐い。僕は途中で立ち止まってしまった。
「何でこんな事するん?」
「えっ?」
「何でこんな事するん?」
「えっ?」
「僕の臓器はキレイかなお医者さん?」
「・・・駅員ですが?」
人体模型は胃を取り出した。
ブシャッ!
胃の中に入ってる水を噴射してきた。水風船を握るとあんな噴射をするだろう。
カウンターの机と駅員さん用の机にかかった。
シューと机が泣いた。
かかった部分が溶けた。木の鉛筆にもかかったらしくそれは腐ったようにモロくなった。
ヤバい!めっちゃヤバい!
死ぬ。間違いなくかかったら死ぬ。
空っぽの胃を人体模型は見つめた後に僕の目を見て
「何でこんな事するん?」
とまた聞いてきた。その瞬間心臓のバクバク音が聞こえてきた。
ドクッドクッドクッと異常に早いスピードで自分の心臓は動いている。緊張感はピークに達した。
僕は動けずにいると人体模型は
「蛇口発見♪」
と嬉しそうに言う。
僕と反対側の通路に蛇口はある。駅員用の机でこっちと向こうの通路を隔ててるおかげで少し余裕はあった。
模型は反対側の蛇口で胃に水を入れ始めた。
今か?今なのか?
ドクン、ドクン動いてる心臓めがけて吹き矢を打つのは。しまった。包丁持って来たら良かった。
思ったより早くに水を入れ終えた模型はそこに自分の唾を加えた。
あの唾がヤバいんだなと分かった。
胃に水を入れるタイミングが狙い目なのは分かった。
模型は僕じゃなく、外に向かって走って行った。改札の方に目をやるとおかっぱ頭の警備員がキョロキョロしてた。
「何で木下は生きてるんだよ」
初田の言葉を思い出した。あの時に初田に腹が立った。
って事はあの警備員は初田だ。
ここだと僕も追いかけた。一応初田と自分で挟み撃ちの形に持って行った。
「うわっ!何やお前」
初田警備員の両肩を掴んだ人体模型。いつの間に胃を元の場所に戻したのか。
「何でこんな事するん?」
例の言葉を言った後、「カーッ」とタンを吐く前の音を出した。
「うわっ!ごめん。ごめんって!」
謝る初田の顔面にタンを吹っかけた。
「熱い!熱い!うわぁ!」
初田は顔面を覆って倒れ込んだ。
人体模型は倒れた初田の髪の毛に胃の水をかけた。
ジュー。ギャー!
焼ける音と初田の叫びが聞こえた。
髪の毛はみるみる溶けていき、頭皮にも水が浸入したのか
「頭熱い!あたまぁ!あっあ、あっち、ちぃ!!!!!」
しばらくすると何も言わなくなった。
人体模型はしばらく初田の死にゆく様を見ていた。
「バチを与えてやった。ヒヒッ」
と嬉しそうだ。その隙に詰め寄った。どんな下手くそでも当てれるくらいに。ここしかチャンスは無いと思った。仕事を終えた模型の一服を狙うしかない。
5m程まで近づくと模型は振り向いた。
「フッ!」
と吹き矢を吹いた。心臓の上に刺さった。ど真ん中じゃない。
「・・・何でこんな事するん?」
まずい。倒れない・・・
逃げた。本気で駅員室へ逃げた。
少し追いかけてきたが、途中で倒れた。
「?」
「お前は絶対に・・・」
と言って模型は倒れた。
戻って倒れた警備員を見ると顔面大火傷を負っていた。スキンヘッドになった頭が腫れ上がっていた。
しばらくすると老婆が現れた。
「警備員がやられる前にやらな。初田君って分かってて待ったんか?」
不敵に笑いながら聞いてきた。
「いや、何て言うか、一発しか無いから外れたら終わりや思って確実に・・・」
「やられてる隙にってか。ハッハッハ」
「もう、この世界から脱出させてください!」
「仕事決める事じゃよ。正社員でな。後バヤルララーも言わんでいいから。さっき吹き矢あった場所にまた武器置いとくから」
「えっ?」
「どうせ武器使うじゃろ?」
「・・・はい」
絶望した。これはまたあるって事だ。




