第37話 印刷工房の公開聴聞
公開聴聞の日、前庭には村人、教師、修道女、役場職員、製紙場の職人まで集まっていた。
中央の机へ並ぶのは、私が綴じ直した証拠一式だ。勅許状、差し替えられた教本契約、二重帳面、寄進台帳、水車権原本、開校証、そして旧乾燥庫で押収した指示書。
ベルント・グランツは最後まで余裕の笑みを崩さなかった。町書記ハインツと、王都学舎局書記官ローデリヒも隣に座る。
「まず、契約の差し替えから説明します」
私は再圧された封蝋の図と、雪花印の透かし図を掲げた。
「本体は王都紙。添付契約だけ北辺紙。しかも港到着後に封を開き、焼き直しています」
次に二重帳面を開く。上質紙の束数、再生紙との差額、勅許印焼直し代、水車統合契約準備費。数字は雄弁だった。
マーガレーテが公文書としての確認を述べる。
「学舎局は、この添付契約を正式発行していません」
ざわめきが広がる中、私は寄進台帳と開校証を並べた。
「学校の教本費は、元々、水車収益から支えられていました。だから水車権と開校証は一対で保管されていた。これを崩せば、教本も学校もまとめて弱らせられる」
最後に水車権原本と、旧乾燥庫の指示書を示した。
『雨の夜に処理。文字判読不能を確認後、役場へ返送』
ベルントの顔から、ようやく余裕が消えた。ハインツは視線を落とし、ローデリヒは何か言い訳しかけたが、マーガレーテが先に切り捨てる。
「子どもの教本を減らし、学校の寄進を奪い、原本を濡らして消そうとした。十分です」
ルーカスが一歩前へ出た。
「北辺では、この契約を無効とする」
声は低いのに、広場の端まで届いた。村人たちの間から、安堵と怒りの入り混じった息が漏れる。
私は机の上の紙を見渡した。
今度は、誰の前でも破られない。




