第31話 修道院から来た古い包み
翌朝、アデルハイト修道女長から届け物があった。
先日渡された油紙包みを、地下蔵の乾燥棚で二晩休ませたところ、中の紙がようやく剥がせる状態になったらしい。
私は息を止め、端から少しずつ開いていく。現れたのは、古い地図と覚え書き、それに開校証の残り半分だった。
『北辺第一学舎開校証。紙工組合の寄進ならびに水車権収益をもって維持する』
焼けていた断片とぴたりと繋がる。けれど決定打は、その裏に挟まっていた短い走り書きだった。
『水車権原本は町役場保管箱第三段、学舎箱と同封』
第三段。私はすぐに役場の保管棚を思い浮かべた。今は空いていると聞かされた区画だ。
「役場にあったのね」
ルーカスが頷く。
「そして今はない」
私は包みの紐を見た。修道院のものではなく、町役場が保管箱に使う灰青の綴じ紐だ。つまり包みは一度役場へ渡り、そこから誰かに移されている。
エルザが地図を覗き込んだ。
「この印、製紙場の取水路ですね」
地図には水路の分岐が赤で引かれ、古い注記に『学舎用紙優先』とある。グランツ商会が水車権を取れば、この優先順も消されるはずだ。
「開校証は戻せます」
私は慎重に断片を台紙へ伏せた。
「でも水車権原本がなければ、川の契約は止めきれない」
その時、ヨハンが役場帰りの使いから戻った。彼は一枚の受領票を差し出す。
「第三段の箱、先週『乾燥保管』名目で紙商会倉庫へ移されたそうです」
私は票の繊維を指で撫でた。グランツ商会の荷受印が押されている。
開校証の半分を燃やしきれず、残りを役場から動かし、水車権原本だけを別に隠した。
そう考えるのが、一番自然だった。




