第17話 偽りの原本管理台帳
原本管理台帳の分析は、監査室のその場で行われた。
私は残片と文書院保管分の台帳を突き合わせ、番号の飛び方を示す。四十七番の次が五十一番になっている。抜かれた三頁を、北辺紙で後から補ったのが一目でわかった。
「見てください。罫線の幅が違います」
定規を当てると、追記頁だけわずかに狭い。さらに透かしは王立文書院の冠水印ではなく、北辺印刷工房の雪花印だった。
「つまり、この頁は王都で作られていない」
監察官が言う。
「ええ。北辺で差し込まれた。でも差し込んだのは私ではありません。署名欄に残る香油と、紙の保管癖が一致しています」
私はミレイユの方を見た。彼女の手元のハンカチから、白薔薇の匂いが漂う。
「ミレイユは私の印章箱を使って記録欄を埋め、そのあと北辺へ持ち込んだ。フェリクスは請求票で原本を抜き、港経由で工房へ送った」
フェリクスが机を叩いた。
「証拠が足りない! 動機がない!」
「動機ならあります」
私は婚姻契約書を差し出した。
「あなたたちは最初から婚約するつもりだった。私の書庫権限を移すために」
室内が凍る。ミレイユはなおも涙を浮かべたが、その涙はもう誰の庇護も呼ばなかった。
それでも彼女はかすれ声で言う。
「借金を返すには、これしかなかったのよ……」
その瞬間、私は足りなかった最後の紙を思い出した。借金と引き換えの約束を記した、誓約書だ。
「まだ隠しているものがあるでしょう」
ミレイユの瞳が、初めて露骨に揺れた。




