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第16話 王都文書院への帰還

 王都へ戻る馬車の窓から見えた王立文書院は、以前より少しだけ小さく見えた。


 怯えが消えたからだろう。私は証拠箱を抱えたまま、正門をくぐる。出迎えたヘルミーネが、ほんのわずかに目元を緩めた。


「遅かったわね」


「直すものが多かったので」


 聴取はその日の午後、文書院監査室で始まった。長机の向こうに監察官、契約局長、記録官たち。フェリクスとミレイユは整った顔で座っているが、私にはもう紙の裏から見える薄さしか感じられない。


「提出します」


 私は順に証拠を並べた。焼けた契約書は燃えたあとに綴じ直されたこと。逆刷り帳には追加条文の影が残っていること。港の積荷帳が、原本の輸送先を示すこと。


 フェリクスは鼻で笑った。


「北辺の工房が勝手に作った資料だ」


「なら、王立文書院の請求票も偽物だと?」


 私はヘルミーネから受け取った控えを出した。契約書持ち出し請求。署名はフェリクス本人。


 監査室がざわつく。ミレイユが涙声を作った。


「お義姉様は、わたくしを嫌って……」


「嫌ってなどいません」


 私は静かに言った。


「ただ、紙を傷める手つきは見逃せないだけです」


 最後に、私は鍵のかかった油紙包みを机へ置いた。


「原本管理台帳の残片です。本体はまだ読めます」


 フェリクスの顔から、初めて色が引いた。


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