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第七楽章 桜田門外の変について
尊王攘夷の志士は、
会合と称しては酒を呑みながら天下国家を語り、
天誅と称しては誰かを暗殺した。
「こんなことで本当に世の中を変えられるのか」
と、いつも俺は思っていたのだが、人斬りには、
倒幕派の志士の他には、居場所はない。
そして、この時も酒の席で勝海舟が、
「貴殿は桜田門外の変を実際に見たのか?」
そう聞いてきたので、
「ええ、たまたま近くにいまして」
あの頃の俺は、まだ藩主に仕える身で、
参勤交代の主君に従って江戸に来ていた。
そして、その日の朝、
所用で桜田門外へ向かっていたところ、
「事変に出会したのです」
思い出すと、
それは寒い日で三月だというのに、
牡丹雪が降り、辺りは真っ白だった。その時の、
「井伊直弼の行列は総勢で六十人ほどでしょうか」
この井伊の行列に、
「まず駕籠訴を装った男が供頭に近づいて」
それを取り押さえようとした瞬間、
「いきなり斬りつけたのです」
これにより護衛の注意が前方に引き付けられ、
「次に銃声が響き、駕籠が撃ち抜かれたようで」
「その状況では護衛が混乱するのは無理もない」
「はい、僅か十七名の襲撃であったようですが」
乱戦が始まると、襲撃側が有利に戦いを続け、
「最後は井伊直弼の首を討ち取ったのです」
首は一度では落ちず、
三度、鞠を蹴るような音が聴こえた。




