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悪役令嬢、予算書を叩きつける  作者: 南蛇井


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シーン2 「夢の舞台」

 舞踏会当日。


 夜の王都は。


 異常なほど美しかった。


 街路には、

 無数の魔導灯。


 黄金色の光が、

 石畳を照らしている。


 建物の壁面には、

 光の蔦。


 空には。


 人工星群。


 巨大な魔法陣が、

 王都上空いっぱいに展開され、

 夜空へ星を投影していた。


 本物の星より、

 綺麗すぎる。


 だから逆に、

 不気味だった。


 さらに。


 空中を、

 光の楽団が飛んでいる。


 半透明の演奏者たち。


 幻想魔法で構成された、

 浮遊オーケストラ。


 ヴァイオリンの音色が、

 空から降ってくる。


 中央広場では。


 巨大な浮遊式舞踏宮殿が、

 ゆっくり回転していた。


 空中庭園。


 光の回廊。


 水晶階段。


 空に浮かぶ宮殿そのもの。


 王都の人々は、

 完全に熱狂していた。


「すごい……!」


「夢みたい!」


「王家万歳!!」


 子供たちは走り回り。


 恋人たちは見つめ合い。


 商人たちは特需に沸く。


 完全に、

 巨大テーマパーク。


 だが。


 その光景を見上げる

 レオノーラ・ヴァレンシュタイン

 の顔は、

 一切笑っていなかった。


 王都庁舎屋上。


 彼女は、

 魔力測定器を片手に、

 夜空を監視している。


 針が。


 ずっと震えていた。


 危険域。


 しかも。


 上がり続けている。


 レオノーラは、

 静かに眉を寄せる。


「……共鳴率、

 高すぎますわね」


 空気中の魔力が、

 妙に粘ついている。


 王都全体が。


 ひとつの巨大術式へ、

 組み込まれているみたいだった。


 感情。


 歓声。


 期待。


 高揚。


 それら全部が、

 空間魔力へ変換され、

 循環している。


 しかも。


 制御が甘い。


 この状態で、

 大型恋愛イベントが起きれば。


 王都全域が共鳴する。


 最悪。


 都市ごと暴走する。


 その隣で。


 セシル・アークライト

 が、

 夜空を見ながら笑っていた。


「いやぁ」


「世界、

 やる気満々だな」


 最低の感想だった。


 レオノーラは、

 即座に睨む。


「他人事みたいに言わないでくださる?」


「十分他人事じゃないぞ」


 セシルは、

 空を指差す。


「見ろよ」


 レオノーラが視線を上げる。


 空中宮殿の周囲。


 光が。


 脈打っていた。


 どくん。


 どくん。


 まるで。


 巨大な心臓。


 王都全体が、

 “次のイベント”を待っている。


 そんな感じだった。


 測定器が、

 危険音を鳴らす。


 ピィ――――ッ。


 数値。


 さらに上昇。


 レオノーラは、

 疲れた顔で呟いた。


「……爆発まで、

 あと何分ですのこれ」

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