第七話 『王都大舞踏会 Opening 「国民へ夢を」
王宮からの正式発表は、
朝刊の一面を完全制圧していた。
王都じゅうの掲示板。
魔導通信塔。
新聞。
広場の投影板。
全部が同じ話題で埋まっている。
『王家主催――
王都大舞踏会、開催決定!』
副題。
『国民へ夢を』
その文字を見た瞬間。
レオノーラ・ヴァレンシュタイン
は、
静かに額を押さえた。
「嫌な予感しかしませんわね……」
場所は、
財政再建委員会執務室。
机の上には、
朝刊が山積み。
どの新聞も、
完全に浮かれている。
『王国史上最大のロマンスイベント!』
『恋と夢の夜へ!』
『奇跡を、あなたに』
最後の文句で、
レオノーラは新聞を閉じた。
「災害予告では?」
真顔だった。
向かい側で。
クラリス・エヴァレット
が、
恐る恐る資料を差し出す。
「ええと……
現時点で判明している演出内容ですが……」
嫌そうな沈黙。
そして、
読み上げ開始。
「空中宮殿」
「人工星空」
「浮遊楽団」
「王都全域照明演出」
「空中花弁散布」
「夜空投影魔法」
「全域共鳴型祝福術式」
一つ増えるたびに。
レオノーラの表情が、
段階的に死んでいく。
「……待ちなさい」
ついに止めた。
「“全域共鳴型”とは?」
クラリスが、
震える声で答える。
「王都全体の感情魔力を同期し、
幸福感を増幅する祝福術式だそうです……」
沈黙。
長い沈黙。
レオノーラは、
ゆっくり天井を見上げた。
「国家が狂っておりますわね」
完全に結論だった。
しかも。
資料の最後に書かれている。
『予算:
国家特別行事費より全額支出』
つまり。
国費。
全力投入。
レオノーラは、
静かに椅子へ座り直した。
遠い目。
「インフラ補修費を削って、
人工星空を飛ばしますの……?」
「正気ですの……?」
そこへ。
扉が開く。
セシル・アークライト
が、
ふらりと入ってきた。
新聞片手。
楽しそう。
「いやぁ、
盛り上がってるな」
「王都全域恋愛イベントか」
「ついに国家が、
本気で世界観へ寄せてきた」
「やめなさいその言い方」
即座に切り返すレオノーラ。
だが。
セシルは笑っている。
窓の外。
王都では、
既に準備が始まっていた。
巨大魔法灯の設置。
空中足場。
祝福術式の刻印。
街そのものが。
巨大な舞台へ変わり始めている。
レオノーラは、
その光景を見ながら、
静かに呟いた。
「……絶対に爆発しますわね」




