シーン6 「拒絶反応」
翌日。
王立アストレア学園。
朝。
ミレイユ・フェルナン
は、
明らかに人を避けていた。
廊下を歩く時も、
壁際。
視線は下。
誰かを見つけるたび、
進路変更。
特に。
攻略対象たちを、
徹底的に避けていた。
「……避けられてないか?」
アルベルト・ルクレール
が、
困惑顔で呟く。
「避けられてるな」
ガイウス・ベルンハルト
は即答した。
珍しく空気が重い。
周囲の生徒たちも、
ざわついていた。
「喧嘩?」
「イベント停滞期?」
「シナリオ分岐……?」
最後の発想が気持ち悪い。
ミレイユは、
聞こえないふりをして歩く。
関わらない。
近づかない。
感情を動かさない。
それが一番安全。
そう思っていた。
だが。
世界は。
それを許さなかった。
曲がり角。
ミレイユが、
誰もいない方へ進もうとした瞬間。
どん。
誰かにぶつかる。
「っと」
聞き慣れた声。
顔を上げる。
アルベルトだった。
その瞬間。
ぞわっ。
空間魔力が震える。
ミレイユの顔が、
一瞬で青ざめた。
「ご、ごめんなさ――」
逃げようとする。
だが。
ばたん!!
背後の扉が、
突然閉まった。
「!?」
廊下との境界が、
完全に塞がれる。
しかも。
鍵まで落ちる音。
かちゃん。
最悪。
「え?」
アルベルトも困惑している。
「な、なんで閉まった?」
知らない。
だが。
ミレイユは知っている。
これは。
始まった。
次の瞬間。
窓の外。
急激に夕焼けが濃くなる。
ついさっきまで昼だったのに。
時間感覚が狂っている。
さらに。
ぶわっ。
どこからともなく花弁。
風。
光粒子。
甘ったるい空気。
背景音楽みたいな、
魔力振動まで響き始める。
完全に。
恋愛イベント空間。
アルベルトが、
呆然と周囲を見る。
「な、なんだこれ……」
ミレイユは、
震えていた。
呼吸が浅い。
「いや……」
後ずさる。
だが。
空間が狭い。
逃げ場がない。
まるで。
世界そのものが、
二人きりを成立させようとしている。
怖い。
怖い怖い怖い。
また誰かが巻き込まれる。
また暴走する。
また壊れる。
ミレイユの目に、
涙が滲む。
「いや……!」
その声に。
花吹雪がさらに強くなる。
窓が開く。
風が唸る。
魔力光が明滅する。
空間が。
まるで。
彼女の恐怖すら、
“盛り上げ演出”として消費していた。
アルベルトが、
ようやく異常を理解し始める。
「これ、
まさか……」
ミレイユは、
壁際まで追い詰められていた。
肩を抱き。
怯えた目で、
空間そのものを見ている。
ここで初めて。
恋愛イベントは。
ロマンチックな演出ではなく。
本人にとっての。
恐怖演出へ変わった。




