ラスト 「圧力」
中庭。
妙に甘ったるい空気。
風。
花弁。
ざわめき。
完全に、
運命律が張り切っていた。
その中心で。
レオノーラ・ヴァレンシュタイン
は、
とても疲れた顔をしていた。
目の前。
攻略対象集団。
距離が近い。
顔が良い。
圧が強い。
しかも本人たち、
無自覚。
最悪である。
周囲の女子生徒たちは、
完全に色めき立っていた。
「きゃ……!」
「何この構図……!」
「イベントCGみたい……!」
やめろ。
その認識をやめろ。
空間魔力、
また上がった。
測定器が、
ぴぴ、と嫌な音を出す。
レオノーラは、
額を押さえた。
そして。
静かに言った。
「集団で好意を向けるのは、
圧力ですわよ」
沈黙。
一瞬で。
空気が止まった。
攻略対象たち、
固まる。
周囲の女子たちも、
固まる。
風まで止まった。
世界が、
一瞬「えっ?」って顔した。
特に。
アルベルト・ルクレール
。
完全に衝撃を受けている。
「……圧力?」
「高身長高魔力高身分の男性方に、
囲まれておりますのよ?」
レオノーラ、
真顔。
「普通に怖いですわ」
正論だった。
攻略対象たち、
人生で初めての視点を得る。
ガイウスが、
わずかに青ざめた。
「え、
怖かったのか……?」
「騎士科首席が至近距離で立つと、
威圧感が凄いですの」
「……すまん」
素直。
一方。
セシル。
「っははははは!」
吹き出した。
最低。
腹を抱えて笑っている。
「いや、
最高だなこれ」
「攻略対象、
ついに自分たちの圧を知る」
「黙りなさいませ」
だが。
セシル以外、
誰も反論できなかった。
アルベルトは、
呆然としている。
今まで。
自分たちは、
好かれて当然だと思っていた。
近づけば喜ばれる。
話しかければ盛り上がる。
囲めばイベントになる。
だが。
違った。
少なくとも。
レオノーラにとっては。
それは普通に、
圧力だった。
アルベルトは、
小さく呟く。
「あ、
これ怖がられてたのか……?」
遅い。
本当に遅い。
周囲の女子生徒たちも、
微妙な顔になっていた。
「言われてみれば……」
「確かにちょっと圧強い……」
「攻略対象密度高いな……」
世界が、
少しずつ現実を理解し始めている。
その瞬間。
空間魔力が、
わずかに乱れた。
まるで。
運命律そのものが。
『えぇ……?
ここ、
ときめく場面じゃないの……?』
と困惑しているみたいに。
レオノーラは、
その揺らぎを感じ取りながら。
深く、
深く溜息を吐いた。
「なぜ問題点を理解した結果、
こちらへの好感度が上がりますの……?」




