シーン6 「集団包囲」
数日後。
昼休み。
王立アストレア学園、中庭。
穏やかな春風。
噴水の水音。
花壇には、
最近整備された公共緑化事業の花々。
以前より明らかに景観が良い。
なお整備したのは、
だいたい
レオノーラ・ヴァレンシュタイン
である。
本人は今。
資料束を抱えながら、
普通に移動していた。
「東区排水路補修予算……」
「避難誘導灯追加配置……」
「魔力分散装置第三案……」
内容が完全に行政。
悪役令嬢とは。
その時だった。
前方。
影。
レオノーラ、
止まる。
嫌な予感。
そして。
予感は、
大体当たる。
「レオノーラ」
声。
振り向く。
いた。
アルベルト・ルクレール
。
その横。
ガイウス・ベルンハルト
。
さらに。
セシル・アークライト
。
その他攻略対象組。
勢揃い。
嫌すぎる。
周囲が、
ざわついた。
「あっ……」
「えっ」
「逆ハーレムイベント……?」
「始まる……!」
やめろ。
その認識をやめろ。
しかも。
攻略対象たち、
無自覚に距離が近い。
近い。
圧が強い。
顔面偏差値が高い集団が、
一方向へ集まるな。
空間がうるさい。
レオノーラは、
真顔のまま言った。
「……何ですの?」
アルベルトが、
少し言いづらそうに口を開く。
「いや、
少し話を――」
ガイウスも続く。
「礼を言おうと」
まとも。
比較的まとも。
だが。
最後。
セシル。
「観察」
最低だった。
「帰れます?」
「無理」
即答。
腹立つ。
その間にも。
周囲の空気が、
妙に盛り上がっていく。
女子生徒たち、
そわそわ。
男子生徒たち、
野次馬化。
風。
吹く。
花弁。
舞う。
レオノーラ、
ぴたりと止まる。
嫌な予感。
懐から、
小型測定器を取り出す。
数値確認。
微増。
空間魔力、
上昇中。
レオノーラ、
無表情になる。
「……運命律」
反応している。
しかも。
妙に活性が高い。
まるで。
『おっ、
人気攻略対象集合イベント!?』
とでも言いたげな、
嫌な揺れ方。
世界が、
嬉しそう。
最悪である。
セシルも気づいたらしい。
ちらりと測定器を見る。
「うわ」
「露骨」
アルベルトたちは、
まだ理解していない。
「何だ?」
「どうかしましたの?」
レオノーラは、
ゆっくり周囲を見る。
視線集中。
ざわめき。
期待。
盛り上がる空気。
完全にイベント前。
そして。
運命律は、
こういう“構図”が大好きだった。
レオノーラは、
深々と溜息を吐く。
「最悪ですわね……」
その瞬間。
なぜか遠くで鐘が鳴った。
演出するな。




