第五話『攻略対象たち、反省会をする』 Opening 「反省会」
王立アストレア学園。
旧生徒会室。
かつては、
優雅な茶会と恋愛相談の場だったそこは。
今。
『恋愛災害対策会議室』
という、
あまりにも終わった看板を掲げていた。
室内。
空気が重い。
とにかく重い。
長机の上には、
書類。
報告書。
修繕見積。
事故記録。
被害一覧。
全部。
恋愛イベント関連。
紙の圧だけで罪悪感がある。
窓際では、
夕日が差し込んでいた。
なお、
今回は自然夕日である。
誰も魔法を使っていない。
それだけで安心感が違った。
机を囲むのは、
この学園を代表する攻略対象たち。
アルベルト・ルクレール
。
ガイウス・ベルンハルト
。
セシル・アークライト
。
その他、
顔面偏差値だけで国家予算を溶かせそうな面々。
しかし今。
全員、
元気がない。
理由。
机の中央。
山積み資料。
『温室崩壊事故報告』
『第二回廊壁ドン被害記録』
『舞踏会魔力暴走損失一覧』
『王都東部停電補償費』
タイトルがもう災害庁。
沈黙の中。
アルベルトが、
一枚の報告書を手に取る。
そこには。
負傷者数。
修復費。
労務超過。
魔力炉交換費。
そして。
被害総額。
桁がおかしい。
王子の顔から、
少しずつ血の気が引いていく。
「……俺たち」
ぽつり。
「迷惑かけてたのか……?」
遅い。
室内全員、
ちょっと微妙な顔になった。
特に。
部屋の隅で資料整理していた、
クラリス・エヴァレット
。
目が死んでいる。
「はい」
即答だった。
重い。
アルベルト、
固まる。
ガイウスも、
静かに資料を覗き込む。
「……校舎って、
そんな高いのか」
「高いですわね」
クラリス、
無表情。
「普通は、
恋愛イベントで壊れませんので」
正論が鋭利。
一方。
セシルだけ。
なぜかちょっと面白そうだった。
椅子へ深く座り、
頬杖。
「いやぁ」
「攻略対象反省会って、
なかなか見ない光景だな」
「お前は反省しろ」
アルベルトが睨む。
セシル、
即答。
「してる」
一拍。
「世界に」
最低だった。
重苦しい空気の中。
机の上の資料だけが、
現実を突きつけている。
今まで。
彼らは、
恋愛イベントの“主役”だった。
だが。
その裏側には。
壊れた校舎。
徹夜工事。
断水。
停電。
請求書。
そして。
全部後始末していた人間がいる。
攻略対象たちは。
ようやく。
その事実を見始めていた。




