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悪役令嬢、予算書を叩きつける  作者: 南蛇井


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ラスト 「世界の反動」

 深夜。


 王都。


 静かだった。


 修復工事の音も少ない。


 暴走事故もない。


 噴水も爆発していない。


 魔法灯は安定。


 水道正常。


 人々は眠っている。


 平和だった。


 ……少なくとも、

 表面上は。


 財政再建委員会執務室。


 机の上には、

 未処理書類の山。


 その横で。


 レオノーラ・ヴァレンシュタイン

 は、

 最後の報告書へ目を通していた。


 ふと。


 机の端。


 魔力測定器。


 針が揺れる。


 ぴくり。


 レオノーラ、

 顔を上げた。


 次の瞬間。


 ブゥゥゥゥン――。


 低い共鳴音。


 空気が震えた。


 窓ガラスが、

 微かに軋む。


 王都全域。


 空間魔力急増。


 レオノーラが立ち上がる。


「……っ」


 測定器。


 数値が跳ね上がっている。


 異常値。


 しかも。


 発生源が存在しない。


「何ですのこれ……?」


 通常なら。


 恋愛イベントには“中心”がある。


 告白。


 接触。


 感情高揚。


 二人きり。


 だが今。


 違う。


 王都全域が、

 同時に脈打っていた。


 まるで。


 都市そのものが、

 巨大な感情体になったみたいに。


 窓際。


 セシル・アークライト

 が、

 夜の街を見下ろしている。


 その横顔が、

 珍しく険しかった。


「来るな」


 短い声。


 レオノーラは、

 窓へ駆け寄る。


 王都。


 静かな街並み。


 だが。


 魔力だけが、

 不気味に共鳴している。


 街灯。


 水路。


 時計塔。


 広場。


 全部。


 微弱に発光。


 脈動。


 呼吸みたいに。


「……原因不明?」


 レオノーラが呟く。


 セシルは頷いた。


「違うな」


「原因はある」


 一拍。


「世界そのものだ」


 空気が冷える。


 理解してしまった。


 運命律。


 それは単なる現象じゃない。


 意志がある。


 少なくとも。


 “方向性”がある。


 そして今。


 正常化された国家機能へ、

 反発している。


 抑え込まれた恋愛イベントを。


 規制された“盛り上がり”を。


 世界そのものが、

 取り戻そうとしている。


 まるで。


 飢えた獣みたいに。


 王都全域で、

 魔力が脈打つ。


 静かな夜。


 誰もまだ気づいていない。


 だが。


 何かが確実に、

 近づいていた。


 レオノーラは、

 不穏な夜空を見上げる。


 そして。


 疲れたように、

 小さく呟いた。


「正常な国家運営が、

 世界そのものに嫌われておりますわね……」

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