シーン4 「庶民支持」
数週間後。
王都。
空気が変わっていた。
中央通り。
以前は、
恋愛演出広告と発光薔薇で埋まっていた場所。
今は違う。
整備された花壇。
歩道沿いの魔法灯。
統一された避難誘導光。
無駄にハート型ではない。
実用性がある。
革命だった。
しかも。
綺麗。
朝。
パン屋の店主が、
店先で伸びをする。
「最近、
街が綺麗だな」
隣の洗濯屋が頷く。
「しかも安全」
「前は突然爆発したしな」
基準が終わっている。
だが事実だった。
最近。
本当に爆発が減った。
噴水暴走も減少。
群衆事故も減少。
停電も減少。
断水も減少。
人々が、
ようやく“普通に生活できる”ようになっていた。
市場でも変化が出ている。
余剰だった花材は、
街路緑化へ転用。
王都各地に花壇が増えた。
しかも管理されている。
以前みたいに、
突然恋愛イベント用花吹雪へ消費されない。
花屋のおばちゃんが、
感心した顔。
「最近、
薔薇の価格安定してるねぇ」
「助かるよ」
「毎回、
王子様の気分で暴騰されちゃ困るし」
経済が正常化し始めていた。
工事区域。
装飾魔導士たちは、
都市結界整備へ再就職している。
「浮遊制御固定!」
「東区照明安定!」
「避難誘導光、
接続完了!」
以前は、
ハート型シャンデリアを浮かせていた技術者たちだ。
今は、
インフラを支えている。
なお本人たちも、
ちょっと誇らしそうだった。
「俺たち、
初めて人の役に立ってる気がする……」
「前も役には立ってましたわよ」
「恋愛演出に」
「比較対象が悪い」
一方。
新聞。
王都全域で飛ぶように売れている。
執筆者はもちろん。
エマ・ローレンス
。
見出し。
『悪役令嬢、
失業率まで下げる』
『ロマンスより雇用』
『最近、
政治が機能している』
最後が一番酷い。
新聞を読んだ商人が、
しみじみ呟く。
「最近、
本当に暮らしやすいな……」
「この令嬢、
本当に仕事しかしない」
「逆に怖い」
わかる。
そして。
王都中央広場。
整備された噴水前。
レオノーラ・ヴァレンシュタイン
は、
工事報告書を確認していた。
その背後で。
子どもたちが、
普通に遊んでいる。
誰も吹き飛ばされていない。
誰も突然花吹雪に巻き込まれていない。
平和だった。
レオノーラは、
静かに街を見る。
その視線の先。
人々は、
確かに笑っていた。
恋愛イベントではなく。
普通の生活の中で。




