シーン5 「王子との温度差」
王都中央広場。
復旧工事、
最終段階。
巨大噴水の周囲では、
技師たちが忙しく動いていた。
「東側圧力正常!」
「魔力流安定!」
「分散装置、
接続完了!」
新型魔力分散装置。
耐イベント構造。
感情魔力遮断弁。
レオノーラ主導の、
王都インフラ改革。
その象徴とも言える工事だった。
広場中央。
レオノーラ・ヴァレンシュタイン
は、
図面を確認している。
「西側水圧、
あと〇・三下げてくださいまし」
「噴水核へ
直接魔力を流さないこと」
「演出回路は
試験終了まで封鎖――」
その時。
ぱぁぁぁっ。
七色の光。
広場全体が、
急にキラキラし始めた。
花弁が舞う。
噴水が発光。
虹色の水流。
しかも謎に鐘の音まで鳴る。
現場、
静止。
工事班。
技師。
役人。
全員。
嫌な顔で、
ゆっくり後ろを向く。
そこにいた。
アルベルト・ルクレール
が。
めちゃくちゃ爽やかな笑顔で。
「どうだ!」
「街に希望を感じないか!?」
感じるのは不安である。
しかも本人、
本当に悪気がない。
それが最悪だった。
沈黙。
工事班の一人が、
小声で呟く。
「終わった……」
別の技師。
「まだ試験中だぞ……」
レオノーラは。
無言だった。
静かに。
本当に静かに。
アルベルトを見る。
そして。
「……なぜ光らせましたの?」
声が静かすぎて怖い。
だがアルベルト、
まったく気づかない。
「王都の人々も、
不安になっているだろう?」
「だから少しでも――」
キラァァァン!!
また噴水が光る。
花弁増量。
完全に追撃。
「希望を与えたくて」
レオノーラ。
一拍置いて。
「水圧試験中です」
沈黙。
アルベルト、
固まる。
「……え?」
次の瞬間。
ゴゴゴゴゴ……!!
噴水基部が震えた。
技師絶叫。
「圧力逆流!!」
「魔力干渉!!」
「止めろぉぉぉ!!」
遅い。
ドバァァァァァァン!!
噴水暴発。
超高圧水柱。
広場全域水浸し。
工事班直撃。
役人転倒。
花弁ごと吹き飛ぶアルベルト。
そして。
レオノーラ含め、
全員びしょ濡れ。
数秒後。
静寂。
ぽたぽた水音だけ響く。
工事班。
「あーーーーーー!!!」
「まただぁぁぁ!!」
「誰か王子止めろぉ!!」
「試験やり直しだ!!」
阿鼻叫喚。
アルベルト、
水浸しのまま青ざめる。
「す、すまない……」
本当に反省はしている。
だが遅い。
レオノーラは、
濡れた前髪をかき上げながら、
額を押さえた。
「……だから」
深いため息。
「申請制ですのよ……」




