シーン4 「国民人気爆発」
数週間後。
王都は、
目に見えて変わっていた。
朝。
東区の共同水場。
蛇口をひねれば、
ちゃんと水が出る。
以前みたいに、
途中で虹色発光したりしない。
平和だった。
人々は、
最初それを信じられなかった。
「……出てる」
「普通に出てる」
「爆発しない」
基準が終わっている。
別の区域。
夜。
街灯が安定して点灯していた。
以前は、
恋愛イベントが起きるたびに
王都のどこかが停電していたのだ。
だが最近は違う。
送電が安定。
魔力炉も正常。
公共設備停止件数、
大幅減少。
さらに。
群衆事故。
将棋倒し。
イベント暴走。
建物倒壊。
それらも、
目に見えて減っていた。
王都の人間は、
ようやく気づき始める。
あれ。
最近。
普通に暮らせる。
パン屋。
「最近、
店が水浸しにならねぇな」
洗濯屋。
「停電減ったから、
乾燥魔法が安定してる……!」
市場の商人。
「輸送遅延、
本当に減ったぞ」
荷運び労働者。
「今週、
一回も爆発に巻き込まれてない」
だから基準がおかしい。
だが。
人々は確実に理解し始めていた。
生活が良くなっている。
誰のおかげで?
答えは一つ。
レオノーラ・ヴァレンシュタイン
だった。
最初は。
「ロマンス破壊令嬢」
「恋愛監査官」
「壁ドン課税女」
散々な言われようだった。
だが今。
庶民の評価は、
完全に変わり始めていた。
「あの悪役令嬢、
めちゃくちゃ仕事する」
王都中で、
同じ言葉が囁かれていた。
そして。
新聞。
王都中央広場。
朝刊売り場。
人だかり。
新聞部記者、
エマ・ローレンス
の新記事が、
貼り出されていた。
『悪役令嬢、
王都の水道を救う』
隣の記事。
『恋愛より排水』
さらに。
『最近、
街が爆発しない』
最後だけ、
ちょっと悲しかった。
だが売れていた。
めちゃくちゃ売れていた。
人々が新聞を読みながら、
頷いている。
「本当に減ったよな」
「前は毎週何か吹き飛んでた」
「最近、
子どもを安心して外歩かせられる」
平和のハードルが低い。
その頃。
財政再建委員会。
執務室。
大量の報告書の中で、
クラリス・エヴァレット
が、
震える声を出していた。
「黒字です……」
誰も反応しない。
もう一回。
「黒字です!!」
今度は部屋が静止した。
「修復費削減!」
「災害補償低下!」
「水道安定化!」
「労務超過改善!」
「王都東区、
今月赤字ゼロです!!」
クラリス、
泣き始める。
感極まっている。
重い。
一方。
レオノーラ本人は、
普通に次の資料を見ていた。
「西区の魔力流、
まだ不安定ですわね」
止まらない。
そこへ。
窓際の
セシル・アークライト
が、
外を見ながら呟く。
「人気者だな」
レオノーラ、
即答。
「不本意ですわ」
「悪役令嬢なのですが」
セシル、
ちょっと笑う。
「もう無理だろ」
一拍。
「国民、
君のこと
“インフラの守護者”
みたいに見始めてるぞ」
レオノーラは、
本気で嫌そうな顔をした。
「嫌な二つ名ですわね……」




