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悪役令嬢、予算書を叩きつける  作者: 南蛇井


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52/103

シーン1 「王国議会」

王都中央議事堂は、

 朝から異様な熱気に包まれていた。


 巨大。


 荘厳。


 そして。


 無駄に豪華。


 白亜の外壁には金装飾。


 階段はやたら広い。


 噴水は光っている。


 なぜ議事堂で噴水を光らせる必要があるのか、

 誰も説明できない。


 さらに問題なのは内部だった。


 天井画。


 歴代国王たちの栄光――ではない。


 全部ロマンス。


 初代国王、

 花吹雪の中で求婚。


 二代目王妃、

 虹の下で涙。


 三代目国王、

 空飛ぶ白鳥の群れとキス。


 国家中枢施設とは思えない。


 レオノーラ・ヴァレンシュタイン

 は、

 馬車を降りた瞬間に頭痛を覚えた。


「嫌な予感しかしませんわね……」


 隣にいたクラリスが、

 死んだ目で頷く。


「議会予算の三割、

 内装維持費です……」


「正気ですの?」


「わたくしもそう思います」


 その時点で、

 既に帰りたかった。


 だが。


 巨大扉が開く。


 ギィィ……。


 議場への道。


 赤絨毯。


 高い天井。


 左右へ並ぶ議員席。


 そして。


 レオノーラが足を踏み入れた瞬間。


 ざわっ。


 空気が揺れた。


 視線。


 視線。


 視線。


 議員たちが、

 一斉にこちらを見る。


 完全に公開処刑空間だった。


 保守派貴族は険しい顔。


 改革派は興味津々。


 一部は露骨に楽しそう。


 最低である。


 さらに酷いのは傍聴席だった。


 新聞部。


 貴族令嬢たち。


 商人。


 一般市民。


 なぜか軽食まで持ち込んでいる者もいる。


 観劇か。


 しかも。


「来たぞ……!」


「あれが悪役令嬢……!」


「今日は王子殿下と対決するらしいぞ!」


「泣くかしら!?」


 完全に娯楽扱い。


 政治ではない。


 イベントである。


 レオノーラは、

 ゆっくり議場を見回した。


 そして。


 静かに思う。


「なぜ政治まで観劇形式なんですの……?」


 この国。


 本当に終わっている。

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