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悪役令嬢、予算書を叩きつける  作者: 南蛇井


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シーン7 「ミレイユの涙」

 混乱の中心で。


 ミレイユ・フェルナン

 は立ち尽くしていた。


 ドレスは乱れ。


 銀髪には灰が付着し。


 周囲では悲鳴が響いている。


 倒れる生徒。


 崩れる天井。


 暴走する光。


 その全てを見て。


 彼女の肩が震えた。


「わ、わたし……」


 涙が零れる。


「こんなの……」


 一歩後ろへ下がる。


「もうやめてください……!」


 その瞬間だった。


 世界が反応した。


 ――――ゴォッ。


 空間全体が、

 巨大な鼓動みたいに震える。


 次の瞬間。


 光。


 圧倒的な白。


 会場全体を飲み込むほどの、

 巨大な魔力爆発。


「っ!?」


 レオノーラが目を見開く。


 時間が止まった。


 本当に。


 崩れ落ちていた瓦礫が、

 空中で静止する。


 燃え広がっていた炎が、

 音もなく消える。


 倒れかけていたシャンデリアが、

 ふわりと浮き上がる。


 転倒寸前だった群衆も、

 まるで誰かに支えられたみたいに動きを止めた。


 静寂。


 奇跡だった。


 そして次の瞬間。


 瓦礫がゆっくり地面へ降ろされる。


 負傷者の周囲へ、

 柔らかな光が集まる。


 熱は消え。


 痛みは和らぎ。


 混乱が、

 一瞬で収束していく。


 誰かが呟いた。


「女神……?」


 完全にヒロインイベントだった。


 幻想的。


 神秘的。


 美しい。


 周囲の生徒たちは、

 涙すら浮かべている。


「奇跡だ……」


「ミレイユ様が……」


「救ってくれた……」


 だが。


 その中でただ一人。


 レオノーラ・ヴァレンシュタイン

 だけが、

 別のものを見ていた。


 魔力測定器。


 数値が狂っている。


 限界を超えていた。


 針が振り切れ、

 ガリガリと異音を立てる。


「……何ですの、これ」


 その時。


 ふと。


 レオノーラは遠くを見る。


 窓の外。


 王都。


 さっきまで輝いていた夜景が。


 消えた。


 一斉に。


 街灯。


 魔法照明。


 塔の灯火。


 全て。


 闇へ沈んでいく。


 王都全域停電。


 静寂が落ちた。


 隣で、

 セシル・アークライト

 が低く呟く。


「……おい」


 その声は、

 珍しく本気で警戒していた。


 レオノーラは測定器を見る。


 理解する。


 今の奇跡は。


 無から生まれたものじゃない。


 どこかから、

 膨大な魔力を引き抜いている。


 だから王都の灯りが消えた。


 だから都市機能が落ちた。


 つまり。


 奇跡には代償が存在する。


 レオノーラは、

 静かにミレイユを見る。


 泣き崩れる少女。


 皆を救ったヒロイン。


 けれどその背後で。


 世界そのものが、

 軋む音がした。

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