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悪役令嬢、予算書を叩きつける  作者: 南蛇井


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シーン6 「舞踏会崩壊」

そして。


 舞踏会は崩壊した。


 バチン、と。


 夜空を覆っていた巨大魔法陣が、

 突如として砕け散る。


 次の瞬間。


 停電。


 会場から光が消えた。


「きゃああああっ!?」


 暗闇。


 悲鳴。


 煙。


 倒れるシャンデリア。


 暴走した魔力の火花。


 逃げ惑う生徒たち。


 混乱が一気に広がる。


 誰かが転ぶ。


 さらに誰かが巻き込まれる。


 将棋倒し寸前。


 完全に大惨事だった。


 だが。


 その瞬間。


「落ち着きなさい!!」


 鋭い声が会場へ響いた。


 レオノーラ・ヴァレンシュタイン

 だった。


 ドレスは水浸し。


 髪には花弁。


 それでも彼女は、

 一切動じていない。


 むしろ一番冷静だった。


「出口を塞がない!!」


「押し合わない!!」


「転倒者優先ですわ!!」


 指示が飛ぶ。


 的確。


 早い。


 周囲の混乱が、

 少しずつ整理されていく。


「浮遊魔法停止!」


「照明系統を全部落としなさい!」


「救護班はこちらへ!」


 完全に現場指揮官だった。


 その横を、

 巨大な瓦礫が崩れ落ちる。


 だが。


 ドン!!


 誰かが片手で受け止めた。


 ガイウス・ベルンハルト

 だった。


「こっちは通るな!!」


 瓦礫を投げ飛ばす。


 崩れた柱を持ち上げる。


 負傷した生徒を抱えて避難させる。


 脳筋。


 だが頼りになる。


「怪我人こっちだ!」


「歩ける奴は後ろへ回れ!」


 普段のイベント体質とは別人みたいに、

 動きが真っ当だった。


 一方。


 会場中央では、

 セシル・アークライト

 が空間魔力を睨んでいた。


 指先へ魔法陣を展開。


 観測。


 解析。


 その顔から、

 いつもの余裕が消えている。


「まずいな」


 珍しく低い声。


 レオノーラが振り返る。


「何がですの!?」


「運命律の増幅速度が異常だ」


 空間が脈打つ。


 まるで世界そのものが、

 感情へ反応して暴れているみたいだった。


「この人数、この感情量、

完全に制御を超えてる」


 その時。


 遠くでまた爆発。


 轟音。


 悲鳴。


 そして。


 アルベルト・ルクレール

 が、

 呆然と立ち尽くしていた。


 ようやく。


 ようやく彼は、

 事態の深刻さを理解した。


 自分の演出が。


 ロマンが。


 現実に被害を出している。


 その光景を見てしまった。


「……こんなはずじゃ」


 掠れた声。


 レオノーラは彼を見る。


 そして静かに言った。


「災害は、

“こんなはずじゃなかった”

で起こりますの」

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