表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢、予算書を叩きつける  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/103

シーン6 「ガイウスの悩み」

 崩れた回廊の片隅。

 修復班が瓦礫を運び、

 教師たちが安全確認を行う中、

 ガイウス・ベルンハルト

 は珍しく小さくなっていた。

 巨体なのに。

 妙にしょんぼりしている。

 レオノーラはそれを見て、少しだけ意外に思った。

 もっとこう。

 「愛の力だ!」とか言い出すタイプかと思っていた。

 だが実際は。

 本気で困っている顔だった。

 ガイウスは崩れた壁を見ながら、ぼそりと呟く。

「……最近、変なんだ」

 レオノーラが視線を向ける。

「変?」

「ああ」

 ガイウスは頭を掻いた。

 少し言いづらそうに。

「感情が高ぶると、勝手に演出が始まる」

 レオノーラは黙って聞く。

「風が吹いたり」

「花が舞ったり」

「空が光ったり」

「突然BGMみたいなの聞こえたり」

「BGM」

「聞こえないか?」

「わたくしにも最近うっすら聞こえておりますわ」

 嫌な慣れ方だった。

 ガイウスは真剣な顔で続ける。

「しかも周囲も勝手に盛り上がるんだ」

「でしょうね」

「普通に話してるだけなのに、“決闘だー!”とか言われて」

「ええ」

「気づいたら戦ってる」

「怖いですわね」

「怖い」

 真顔だった。

 どうやら本人も被害者である。

 ガイウスはため息をついた。

「この前なんか、廊下でぶつかっただけで夕焼けになった」

「時間帯は昼でしたわよね?」

「昼だった」

 意味がわからない。

「しかも女子たちが泣いてた」

「なぜ」

「俺にもわからん」

 本当にわかっていなかった。

 レオノーラは静かに考える。

 攻略対象たちは、

 この世界を楽しんでいる加害者側だと思っていた。

 だが違う。

 少なくとも全員がそうではない。

 この男は。

 “イベント”に振り回されている。

 そしてガイウスは、小さく本音を漏らした。

「俺は普通に話したいだけなんだが……」

 その言葉に。

 レオノーラは少しだけ目を見開いた。

 初めてだった。

 攻略対象側から、

 “普通”を望む声を聞いたのは。

 恋愛イベント。

 運命演出。

 感情増幅。

 偶然の事故。

 それらは。

 攻略対象自身の意思すら超えて発動している。

 つまり。

 この世界の“強制力”は、

 彼らすら巻き込んでいる。

 レオノーラは静かに呟く。

「……やはり、異常ですわね」

 ガイウスが苦笑する。

「今さらか?」

「今までは“恋愛脳が多い世界”だと思っておりましたの」

「違ったのか?」

「世界そのものが恋愛脳でしたわ」

 それはかなり終わっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ