ラスト 「世界の強制力」
重たい沈黙が、教室を包んでいた。
誰も喋らない。
レオノーラ・ヴァレンシュタイン
の分析は、あまりにも妙に筋が通っていたからだ。
感情が高まる瞬間。
必ず起きる事件。
偶然にしては出来すぎている。
まるで。
本当に。
“そうなるように世界が動いている”みたいに。
そして。
――ドゴォォン!!
爆発音。
教室の窓がびりびり震えた。
外で黒煙が上がる。
数秒、沈黙。
誰も驚かなかった。
慣れていた。
それが一番怖かった。
「あー」
エマ・ローレンス
が窓を開け、ひょいと外を見る。
実況慣れしている。
「あ、騎士科で決闘イベント始まりました」
「始まりました、ではありませんわ」
レオノーラが即座に突っ込む。
窓の外では、遠くの訓練場から光が噴き上がっていた。
男子生徒たちの歓声まで聞こえる。
「おおーっ!!」
「やれー!!」
「青春ー!!」
青春で爆発するな。
その横で、
トーマ
が静かに立ち上がった。
「ほっほっほ。では後で消火道具持っていきますかな」
完全に日常業務だった。
バルド
など、すでに工具箱を持っている。
「たぶん壁いったな」
経験則が嫌すぎる。
一方、
クラリス・エヴァレット
は静かに帳簿へ何かを書き込んでいた。
「……修繕費、追加ですわね」
手際が良すぎる。
全員の“慣れ”が恐ろしかった。
そんな中。
レオノーラだけは、じっと窓の外を見ていた。
真顔で。
まただ。
また完璧なタイミング。
また偶然。
また感情が盛り上がる瞬間に事件が起きる。
決闘。
対立。
衝突。
歓声。
そして爆発。
まるで舞台装置だ。
誰かが。
あるいは世界そのものが。
“そういう展開”を求めているみたいに。
風が吹く。
遠くで歓声。
煙。
夕焼け。
あまりにも劇的な光景。
だからこそ。
レオノーラは静かに確信した。
「……この世界」
一拍。
「本当に“恋愛ゲーム”ですのね」




