シーン6 「レオノーラの決断」
崩壊する光。
降り注ぐ花弁。
割れた人工星空。
悲鳴。
警報。
浮遊宮殿の振動。
世界そのものが、
狂った舞台装置みたいだった。
その中心。
ミレイユ・フェルナン
は、
膝をついていた。
「ごめんなさい……!」
涙。
呼吸は乱れ、
肩が震えている。
「わたしのせいで……!」
空間魔力が、
びりびりと震える。
彼女が苦しむほど、
世界が反応する。
まるで。
感情を燃料にしているみたいだった。
「わたしが、
ちゃんとしなきゃ……!」
「誰も好きにならなければ……!」
その言葉へ、
運命律が激しく反応した。
どくん。
空気が脈打つ。
魔導灯、
一斉明滅。
空中宮殿、
さらに傾斜。
世界が。
彼女の“拒絶”へ、
怒っている。
その時。
誰かが、
彼女の肩を掴んだ。
レオノーラ・ヴァレンシュタイン
だった。
レオノーラは、
迷わずミレイユを抱き寄せる。
強く。
けれど。
壊れ物を扱うみたいに。
ミレイユが、
震えながら顔を上げる。
「レオノーラ様……」
レオノーラは、
一切迷わず言った。
「違いますわ」
即答だった。
「悪いのは、
貴女ではありません」
周囲で、
空間が軋む。
魔力が逆巻く。
それでも。
彼女は、
真っ直ぐ前を見た。
「感情を持つだけで、
災害扱い?」
「好意を抱くだけで、
世界が暴走?」
「そんなもの――」
一拍。
「欠陥ですわ」
その言葉と同時に。
空間魔力が、
明確に揺れた。
まるで。
世界そのものが、
侮辱されたみたいに。
天井の魔法陣が、
不気味に軋む。
空気が冷える。
だが。
レオノーラは止まらない。
彼女は、
崩壊する舞踏会場を見渡した。
泣いている人。
負傷者。
逃げ惑う群衆。
演出のために、
壊されていく現実。
その全部を見て。
静かに。
けれど、
はっきり宣言した。
「恋愛を強制するなら」
空間が震える。
世界が、
こちらを見た。
そんな感覚。
それでも。
レオノーラは、
一歩も引かなかった。
「こちらは」
一拍。
「世界そのものへ、
抵抗しますわ」
その瞬間。
どくん。
王都全域の魔力が、
脈打った。
今までとは、
明らかに違う。
歓喜でも、
演出でもない。
敵意。
冷たく。
粘つくような。
“何か”の視線。
空間そのものが、
ぎしりと軋む。
割れた夜空の向こう。
誰かが。
見えない観客が。
こちらを睨んでいる。
そんな感覚が、
確かにあった。
そして。
王都全域の魔導灯が。
一斉に、
消えた。




