シーン4 「世界の強制力」
どくん。
その脈動を境に。
世界が、
壊れ始めた。
最初は、
本当に些細な異常だった。
誰かの裾が引っかかる。
誰かの手が触れる。
視線が合う。
――ただそれだけ。
なのに。
空間魔力が、
過剰反応した。
花弁。
光。
風。
音楽。
全部が、
勝手に盛り上がる。
中央ホール。
ミレイユ・フェルナン
が、
バランスを崩いた瞬間。
床面魔法陣が、
自動発光。
光の軌道が、
アルベルト・ルクレール
を強制誘導した。
次の瞬間。
二人の手が、
勝手に重なる。
同時に。
楽団の演奏が、
急変。
ワルツ。
照明集中。
周囲歓声。
「きゃあああ!!」
「始まった!!」
「メインイベント!!」
誰かが叫ぶ。
完全に狂っていた。
しかも。
二人が離れようとした瞬間。
ぱんっ!!
突然。
停電。
王都中央区画の魔導灯が、
一斉消失。
暗闇。
悲鳴。
だが。
その中心だけ。
二人だけを照らすように、
月光が差し込む。
都合が良すぎる。
完全にホラーだった。
さらに。
空間封鎖。
回廊の扉が、
勝手に閉鎖。
避難誘導術式が、
逆作動。
人流が、
強制的に二人の周囲へ集まり始める。
花吹雪、
暴走。
空中楽団、
制御不能。
人工星空、
明滅。
そして。
被害が、
一気に拡大した。
群衆転倒。
魔導灯破裂。
水路逆流。
空中回廊停止。
馬車衝突。
通信障害。
王都全域が、
巨大な恋愛イベントへ巻き込まれていく。
悲鳴。
怒号。
歓声。
拍手。
全部が混ざる。
なのに。
観客たちの一部は、
まだ感動していた。
「綺麗……」
「奇跡みたい……」
違う。
災害だった。
一方。
王都庁舎地下、
災害対策本部。
警報音が、
一斉に鳴り響く。
赤色警告。
魔力値、
限界突破。
レオノーラ・ヴァレンシュタイン
は、
即座に立ち上がった。
「西区画閉鎖!!」
「群衆誘導開始!!」
「医療班、
中央ホールへ移動!!」
「浮遊宮殿、
高度固定!!」
完全に災害司令官。
部屋中が、
走り回る。
クラリスが悲鳴。
「南回廊、
封鎖されました!!」
トーマ。
「水路圧力限界です!!」
バルド。
「群衆が感動して動かねぇ!!」
最悪だった。
レオノーラは、
机へ手をつきながら、
歯を食いしばる。
「……世界そのものが、
イベント成立を優先していますわね」
その瞬間。
どごぉん!!
上空で、
何かが爆発した。
浮遊宮殿の外壁。
巨大な花火みたいに、
魔力が散る。
王都全域から、
歓声が上がる。
違う。
誰も、
まだ理解していない。
これは。
史上最大の恋愛イベントではない。
史上最大の、
恋愛災害だった。




