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サイハテの村人たちは勇者がいなくても平気なようです 〜ただしご近所は魔王城〜  作者: 青咲花星


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第63話 突然のヘルプミー

『助けて』


幼馴染からの突然のヘルプミー


威圧をしてしまったのかと一瞬思ったが、騒がしいので違うようだ。


「何があったのシータ」


エリーはもう一度たずねた。


『どっかの騎士が赤黒い剣を持ったサイハテがドラゴン倒したって言ってたのを子供が聞いたらしい。オレをみつけてはしゃいでそれでさらに広まって、人がめっちゃ集まってる、今は騎士団と仕事あるからって隠れてるけど、探されそうな勢い。抜け出せる気がしない、どうしよう助けて』


やっと理解できた。

淡々と話しているが、これは完全にパニックに陥っている。

最近はなかったけど、彼が多弁で早口になる時は大抵パニックになっている。


「箝口令ができてなかったのね。このままだとシータが勇者、英雄になっちゃうね」

『それは嫌だ絶対嫌だ、死んでも嫌だ、生きてても嫌だ、勇者だけは嫌だ』


悲壮な声に変わり、ネガティブモードのヴィラのように呟く。

とてもとても嫌だという事はよく伝わった。


「じゃあ、その剣のおかげにするのはどうかな。そうね、ちょっとだけ待って……」


エリーは少し考える。

ドラゴンを倒した時のシータの対応。

あの感じでやってもらうとして。


勇者を良い感じに言うのは癪だけど、お前らだけでも強いから誰の助けも借りるな、サイハテは助けない、自力でこっちに来い、来れるもんならな的な感じを裏返しにして応援しているふうに。


言い方はエルダさんの喋り方を参考に、あとお父さんの威厳のある言い方も。


どっかで読んだ勇者の言葉を参考に、それより断然重みがあって格好良く。

(全然平和だけど)我々は世界平和のために戦っている、みたいな感じで。


それらを頭の中でまとめ、伝えた。

通信機越しにぶつぶつと言葉を繰り返しているのが聞こえてくる。


「覚えられた?」

『なんとか』


最悪私が通信機越しに伝えてその通り言えばいい。

でも聞こえた感じ、彼だけでできそうだ。


こういう時、覚えるのはやいよね。


「私も今からそっちに向かうけど、あまり時間がかかると良くないかも」

『動きはそれっぽくすれば良いんだな』


「シータならできるよ。ドラゴン狩りの時みたいに堂々としていれば」

『そうかな』


「ごめんね、こんなセリフ嘘つくことになっちゃうよね」

『勇者になるよりは全然いい』


「全部終わったらみんなでドラゴンのお肉美味しく頂こうね!」


『ああ、楽しみだ』


通話越しに少し緊張のほどけたような顔が見えた気がした。


_________


〜サイハテ村にて〜


「王都に黒いドラゴンが出たってよ!」

「サイハテの青年が仕切ってたってことはシータが倒したんじゃねえかとよ!」


「く〜っいいなぁ、肉はどうなるんだ?」


サイハテの村人たちは盛り上がっていた。


一応、サイハテ村にはイダーテ(最速情報配達)以外にもちゃんと連絡網がある。

魔素がある場所、つまり魔界から出てしまえば他の村で通信を借りたり手紙を受け取ることができる。


そのため王都にドラゴンが出て滅亡の危機に、という大きな事件はすぐに伝わっていた。


「困ったことになっちゃったね〜」

「うむ」


村長とシルディールは食後のお茶を啜る。


「私が倒したかったぁ〜」


情報配達屋から届いた新聞を見るとサイハテの赤黒い剣を持った青年が氷の魔術師と協力してドラゴンを倒したとある。

氷の魔術師とはエリーの事だろう。


「箝口令が行き渡らなかったか」

「白蛇さんはともかく、ドラゴンさんは予測できないよ」


「もっと滞在してたらドラゴン倒しに行ける距離にいたかもしれないのにぃー!!」


エルダはキィーとクッションを叩いた。


本来は騎士団や教会やらと協力して勇者が倒したことにするはずだった。

だが新聞にはサイハテ、とはっきり書かれている。


「よくやった、と褒めてやりたいところだが。どうするか」


「聞けー村ちょー!!」

「酔っ払いは帰れ」


「酔っ払ってないんだよねーこれ」


「うう、エミアに呼んで貰えなかった……」


今度はすんすん泣き出した。

シルディールが妻のエルダの背中を撫でる。


「エミアさんの転移で呼んで欲しかったみたいなんだけど、シータたちが倒してくれちゃった?からさ。子供の成長はとても嬉しい事なんだけど」


「そうか。手紙が来てるが」

「!?」


エルダは村長から手紙を奪い、すぐさま目を通す。


「くっはははははは!!!!」


エルダは豪快に笑い、目を細めた後手紙をシルディールと村長に向けて渡す。


「おもしろい」


そこには娘の勇者お断りの録音をした事や、シータがダンジョンを先回りしていたおかげで勇者が娘を振り向かせない限り永遠にサイハテに辿りつくことはないという内容が記されていた。

そして、事後処理は残っているが子供たちも全員無事だという事も。


「そうだな、これはめちゃくちゃ褒めてやらないとな」


エルダはご満悦のようだ。


「ん?これはどういう事なんだろうねぇ」


シルディールが文の一部を指をさす。


それと、サイハテの鳥くんが未来のお嫁さんを連れてきました。

鳥くんに怒られちゃったけど、猫さん、猫のお姫様と言った方が良いのでしょうか。

とてもかわいらしかったです。

あなた達もそのうち会えるでしょう。


もしかしたら、村のお手紙が届くのがいつもより遅くなるかもしれません。

でも普段通りに戻るようなものなので怒らないで応援してあげてくださいね。

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