第62話 箝口令
「これで最後だよ。お疲れ様」
「うん、牢足りそうでよかった」
イダーテお兄さんは傭兵を掴む前に気まずそうな表情で聞いてきた。
「なあ、エリー。ラピスって何が好きか知ってる?」
「きらきらしたものも好きだし、魔導具に使うアクセサリーとか。名前の通りラピスラズリとか青い色も好きだし、星モチーフも好きだったかな。お菓子はゼリーとか甘いものっていうより爽やかものが好きかな」
「ありがたいけど、やけに詳細に話してくれるね」
「ガイドメモでお店とか教えてくれたでしょ?そのお礼と二人にはちゃんと仲直りしてほしいから」
「ありがとう」
「仲直りできなかったら諦めてね」
「んーそれはやだなぁ」
そう言ってイダーテお兄さんは傭兵の首根っこを3人ずつ両手に掴むと駆け出して行った。
しーんと誰もいなくなり、がらんとした道が少し寂しい。
「さーてとー私はシータのところに手伝いに行こうかな」
そう思ってエリーの足がぴたりと止まる。
また、耳に付けている《《これ》》で話さないといけないのか。
一旦心臓を落ち着かせてから通信しよう。
そう考えていると、シータから連絡があった。
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「大蛇様、お待たせして申し訳ありません」
騎士団が少し距離を置いたような気がしたが気のせいだろうか。
『うぬ。何かあったのか』
「私の妹と預かっている子供が連れ去られまして」
微かにビリッと威圧が発生し、周りにいた騎士団がビクッとした。
『そうか、大変な時に来てしまったな。すまない』
大蛇様は頭を下げた。
「いえ、大蛇様は何も悪くありません。寧ろドラゴンが来ている事を知らせていただいたので助かりました。ありがとうございます。……それで、大掃除についてなのですが」
『うむ、空いてる日でも良い。ただ……』
ただ。
『あやつの落とした卵がな。孵化するかもしれぬのでな、そこらへんの魔物が刷り込みで親になったら厄介なのではと』
確かに卵の落とし主は美味しくいただくことになってもう手遅れだし、もしも魔物が親になったら大変だ。
魔族が親になったらもっと大変なことになってしまうかもしれない。
「大蛇様が親になるというのは」
『却下』
「さいですか」
『餌は魔素があれば大丈夫だ。だから魔素のある広い環境、頑丈な親が揃っていれば良い。つまりサイハテだな』
「頑丈なお『エルダがおるから押し付けようかと思っておったが、あやつが育てると戦闘狂の邪竜になると思わんかね』
押し付ける気満々だな。
確かに、母さんに育てさせたらまた王国滅亡の危機になりそうだ。
「ええまあ、でも頑丈な親がいな『決まりだな!!』
何が決まったんだろう。
まだ頑丈な親、が決まっていないというのに。
「育ちすぎたらまた美味しくいただけばいいか……」
ボソリ、とシータが呟くと大蛇様も騎士も皆後ろに後ずさった。
『それでは一旦我は帰るとしよう。孵化しそうになったらまたここに来る』
つまり、来なかったらまた大騒ぎになるぞという事か。
ずるずると大蛇様は外に出て森へと帰って行く。
シータは目が合った騎士に伝えた。
「東の森にはまだ問題があるようなので、立ち入らないようにお願いします。また更に問題が起きると大蛇様がいらっしゃるようなので」
騎士はコクコクと頷く。
あからさまに怖がられてるのを見るとちょっとハートが悲しい。
「あと、ドラゴンの肉は「あー!!あのひとが勇者様ー!?」
どこからか可愛らしい子供の声。
勇者というワードに思わず威圧しそうになったが、子供がいる。
絶対に威圧してはいけない。
シータは深呼吸をして振り返った。
「勇者ジャナイヨ村人ダヨ」
思わずカタコトで言ってしまい、子供はきょとんとする。
「こらっ騎士さんのお仕事邪魔しちゃダメでしょ。すみません、この子が。勇者様は髪が黒いでしょ、違うと思うわよ?」
子供の保護者が慌てて駆け寄ってきた。
大蛇が帰って行ったから人が出てきたのか。
「えー?でもさっき騎士さんが、赤黒い剣を持ったサイハテがドラゴン倒したって。凄かったって言ってたよー?」
箝口令ぇー
はしゃぐ子供の声が響き、なんだなんだと人が集まってきた。
シータは物陰にさっと隠れて即座に通信機をつけた。
「エリー」
『どうしたのシータ?』
「助けて」




