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サイハテの村人たちは勇者がいなくても平気なようです 〜ただしご近所は魔王城〜  作者: 青咲花星


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第58話 いたいのいたいのとんでけ!


「ああ、なるほど。つまりは反発して拘束具を破壊すればいい」


後ろから覗いてみていたシータお兄ちゃんが言った。


反発して破壊する?僕が?


冷や汗が出てきた。

本当はすぐに頭では分かっていた。

反発の力で僕は無事だったから、もしかしたらディナもこれで拘束が解けるかもしれない。


でも、今のディナは弱っている。力を使ったら、もしかしたら普通の人みたいにドンってなっちゃうかもしれない。


どうする?どうすればいい?


「練習する?」


エリーお姉ちゃんが半分氷漬けになったリーダーらしき傭兵さんを指差す。


「そんな無体な」

「そいつは残しておいてよー僕も何発か殴りたいから」


腕まくりをしてキュッと手袋をはめ直すイダーテお兄さん。

いつも爽やかな笑顔のイダーテお兄さんの目がちょっと怖い。


「いっぱいあるぞ」


シータお兄ちゃんまで、他にいたのか傭兵さんたちの首根っこを掴んで持ち上げて言う。


「待って待って、あのね、多分助けたくない人の拘束をヴィラくんの反発で外そうとしたら力加減を誤ってしまうかもしれないから、だめだと思うの」


ラピスお姉ちゃんがオブラートに包んでくれた。


「冗談だよ、優しいなあラピスは」

「そうだ、冗談だ」

「僕のは冗談じゃないけどねー」


はははと笑う村人たち。目が笑っていないよ。


「ヴィラ」


ディナが苦しそうに声を絞りながら言った。


「私は大丈夫、こんなの平気、やりたくないならやらなくていいし。やってくれるなら助かるけど」

「ディナ」


力を制限されて、普段感じることがない痛みがあるんだ。平気なわけがない。


「僕、やるよ」


ぎゅっと拳を握って、4人に向かって言った。


「何か能力をコントロールするコツとかあったら、教えて!」


「「「コツ……」」」


村人全員がうめく。

エリーは魔術だけど時々感情で暴発する。

シータは上に同じく感情ですぐ暴発する。

イダーテはただ走ってるだけ。


つまり全員コントロールというものをよくわかっていない。


村人たちは全員ラピスを見た。


ラピスはため息をついてネックレスを取り出し、ディナの首にかけた。


「一応、これは保険。身体が粉砕した時に魂が飛び出さないようにできるから。王族のためのものだけど今は貸してあげるね」


いや、あの、怖い。

ディナもさっきより青ざめている。


「あとはアドバイス。力は使おうとする気持ちよりも、助けたい、何かをしたいって気持ちの方がうまくコントロールできるの」


「ネガティブだったり、怒ったりするのはダメ」


ラピスお姉ちゃんがちらりとシータお兄ちゃんを見た気がする。


「あと、力にはただ同じ方向にやるんじゃなくて、屈折させる方法がある」


鏡に当てた光の屈折みたいに。とラピスお姉さんは取り出した手鏡で光をちらちらさせる。


「だから、最初からいきなり反射させるんじゃなくて、触れて、その、いたいいたいの飛んでけーって、怪我した時の呪文みたいに、どっか飛んでいくイメージをするといいわ」


ちょっと照れながら言うラピスお姉ちゃん。

イダーテお兄ちゃんはふっと口を抑えて笑いを堪え、ラピスお姉ちゃんに睨まれると咳払いをした。


「そうだね、犯人に飛んでけ〜でもいいと思うよ」


ちょっと黙っててくれないかな。


ラピスお姉さんがやってみてと、僕とディナから離れた。


いつものように、ディナに触れる。

大丈夫、ディナなら触れられる。


ディナが今の痛みや苦しみが解放されますように、


そっと触れて、見えない鎖を掴んで僕は叫んだ。


「いたいいたいのとんでけ!!」


ベリっと音がして、掴んだものを投げたら斜め後ろの方ではじけたような気がした。


「ディナ?大丈夫?」


すっと顔色が良くなり、ゆっくりと身体を起こしたが、何も言わない。


「ねえ、ディナ?」

「もう、全然痛くない…すごいじゃない、ヴィラ、制御できたのよ!!」


「おめでとう!!助けてくれてありがとう!!」


ディナの満面の笑みに、思わず身体が動いた。


「ディナが無事でよがった、本当によがったあああああ」


僕はディナに抱きつきながら号泣した。

不安だったり我慢していたものがいっぱい、今更溢れ出てきた。


抱きついておきながら、これ嫌そうに振り解かれるのではと思ったけど、逆にぎゅっとされた。

ちょっとビクッとしたけど、ディナの泣き声が聞こえて、僕たちはそのまましばらく泣いていた。

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