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サイハテの村人たちは勇者がいなくても平気なようです 〜ただしご近所は魔王城〜  作者: 青咲花星


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第57話 優しく優しく

「何か言ったか?」


思わず呟いてしまったらしい。

ぴたりと止まって男は振り返った。


僕は叫ぶ。


「みんな!!」


これは嘘だ。

商店街で嘘をつかれた仕返しだ。


傭兵が驚いて警戒している間に僕は小さな小さな石を拾う。

当たっても指一本くらいで済みそうな石っころを。


ディナに当たらないようにと、反対側の手に向かって思いっきり投げると命中してナイフは落ちた。


「ちっ」


傭兵は石が当たった手を反射的に押さえようとディナを離しそうになったが、今度はディナの髪を掴んだ。


思わず、走って体当たりをしそうになったが必死に抑えた。


(反発しないように反発しないように反発しないように反発しないように)


僕はぎゅっと胸の辺りを押さえた。

少し疑問に思っていた。

どうして、もらったペンダントは機能していたのにこの人の拘束は機能しなかったのか。


もしかしたら、ペンダントも元々効いてなかったのかもしれない。

エリーお姉ちゃんも使っていたから、効果は抜群だってわかってたからなのか。

暗示みたいなものなのかもしれない。

僕が受け入れたからこのペンダントは機能しているのか。


わからない。


でもただの暗示だったとしても、学院見学の時はちゃんと抑えることができた。


だから大丈夫、今はもらったペンダントがある。

だから、本当にそっと優しくならきっと大丈夫。

深呼吸をして、言った。


「傭兵さん、ディナを離してくれないかなぁ?」


そう、優しく、とっても優しく


「ディナがいないと、僕が困るんだ。ディナは僕よりずっとずっと強いんだ」


ゆっくり近づいて、そう、突然動かないように。


「だって、みんな僕のこと触ると弾けとんじゃうんだもん」


傭兵さんはどうしてかディナの髪を掴んでいた手を離した。


あともう少しで触れられる。


ディナの隣にいたいから、僕は今からこの力を使う。


指先が触れようとしたその瞬間、


「「ウチ(サイハテ)の子達に何してくれてんじゃあ」」


聴き慣れた声と共に、ドゴッと大きな音が響いて傭兵さんが視界から消えた。

エリーお姉ちゃんとシータお兄ちゃんだ。


「ヴィラ、大丈夫?」


上から声が降ってきた。

屋根の上でイダーテお兄ちゃんがラピスお姉ちゃんを抱えている。


よかった、無事だったんだ。

イダーテお兄さんのほっぺが真っ赤なのがちょっと気になるけど。


「僕は大丈夫、それよりディナが!!」


慌ててディナの元へ駆け寄った。

ディナは苦しそうに身を縮こまらせている。


「これは……拘束薬を霧状にしたものかしら。かけられたところが拘束されて力を制限すると共に動けなくする薬ね。呪いに近いものだから外すには高位の神官か、かけた人にしか解除できないわ」


対サイハテ用に作られたものだろう。


「強靭は跳ね除けることはできないから、纏わりついてそのまま力を制限されて動けなくなってる」


「強化魔法や結界も制限されちゃうみたい」


エリーお姉ちゃんが魔術を使ってみたがダメだったようだ。


「それじゃあどのみち僕が運ぶことはできないね」


イダーテお兄ちゃんの移動には空気抵抗がある為強化が必要だ。

今のディナには辛すぎる。


「やりたくないけどもうひとつ方法があるよな……」

「うーん、余罪もありそうだからすぐやっちゃうのはちょっと」


村人たちは今にでもやりそうな深淵の目をしているが、抑えているようだ。


「そんな、じゃあディナはそのまま我慢しろって事……?」

「イダーテいい加減降ろして」


「はいはい」


ラピスお姉ちゃんがゆっくり歩いてきて少し屈む。


「これ、エミア様から。ヴィラくんならもしかしたらできるかもしれない」


メモをそっと受け取って読む。

こんなことできるのだろうか。

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