第56話 サイハテ村のヴィラ
ディナが傭兵に引き摺られていく。
僕は大人しくついて行く。
助けたいけど、僕の反発で今のディナに当たってしまったら大変なことになってしまう。
やっぱり僕は何もできないのだろうか。
僕はいつも何もできない。何も反抗してはいけない。
抗ってはいけない。
全部跳ね除けてしまうから。
_____________
僕は幼い頃、サイハテ村と王都の間くらいの場所に住んでいた。
サイハテ村の人間だけど、両親が商人をやっていたからそこを拠点にしていたらしい。
でも、もう物心ついた時には両親はいなかった。
「ヴィラ、気にするな。ドアの後ろにいるのに気が付かなかった俺が悪い」
部屋の前にいた僕と部屋のドアを開けようとしたおじさん。
ちょうどぶつかって、僕はおじさんを吹き飛ばしてしまった。
引き取ってくれたおじさんは強くて優しかったけれど、僕のせいでだんだん身体のあちこちに傷ができた。
頑張って気をつけようと思っても、ふとした時に跳ね返してしまう。
そして年々この力は強くなっていた。
早く一人で生きられるようにならないと。
そしていつか離れなければと思った。
「ヴィラ、サイハテ村に行かないか」
ある日おじさんが提案をしてきた。
ああ、とうとう見捨てられるのか。でもきっとその方がいい。
泣きそうになるのを我慢していると、おじさんは慎重にだけど傷だらけのあたたかい手で撫でてくれた。
「お前の事が嫌いなわけではない。ただ、その力は俺の手には負えないしお前も制御できなくなってきている」
「わかってる」
「サイハテ村にはあらゆる能力を統治できる魔術師がいるし、お前の力も平気だという子もいるらしい。もしかしたら普通の子のように遊ぶことだってできるかもしれない」
「うん」
「いつか、その力もきっと役に立つものになる」
こんな力が役に立つなんて事あるわけがないと思ったけれど。
誰かと関わりが持てるようにというおじさんの優しさは伝わった。
僕は沢山泣いた。
その日から涙腺が壊れたのか、泣き虫になってしまった。
数日後、村にエリーお姉ちゃんとシータお兄ちゃんが来た。
エリーお姉ちゃんは僕をみるなり抱き付いてかわいいと頬擦りをしてきた。
シータお兄ちゃんはそのせいでとんでもない圧でおじさんを平伏させてしてしまった。
正直めっちゃかなり怖かったけど、お姉ちゃんを僕から引き剥がした後優しく撫でてくれた。
エリーお姉ちゃんには僕の反発が効かないし、シータお兄ちゃんもちょっとパチンっとなるだけで平気だという事がわかった時はびっくりした。
サイハテに行けば、もう大丈夫なんだと安心していた。
村から離れて2日目の昼。
野営をしようと準備をしていたところ、サイハテの子供を狙う盗賊に囲まれた。
「ヴィラ、大丈夫だ。エリーはめっちゃ強いから」
「う、うん」
帰る足がなくなってしまうので馬に影響してしまうシータお兄ちゃんの威圧は使えない。
エリーお姉ちゃんの魔法で倒せるといえば倒せるが、人数が多い。
相手が何らかの対策をしている可能性もある。
「わあああ!」
いつもの癖で離れていたのがまずかった。
後ろに回りこんでいた盗賊に僕が捕まってしまった。
「おい、気絶させとけ!子供でもサイハテだ、何するかわからん!」
僕が狙われているんだ。
このまま捕まったら、どうなっちゃうんだろう。
僕はサイハテに行くって決めたのに!
「嫌だ!!」
迫りくる拳に僕は思わず盗賊の腕を押しのけた。
鈍い音がした。
ビシャリ、と何かが飛び散る音がした。
今まで自分から反発を使おうと思ったことはなかった。
どれも不意に起こったことだった。
「ヒッ」
誰かが悲鳴をあげた。
それを合図に盗賊達は狼狽える。
僕は震えながら、前を見る。
真っ青な盗賊の顔。
迫って来ていた拳がない。
その後方には点々と続く血の跡、ぶつかった木の下には飛んでいった腕。
「化け物」
その声に何が起きたのか。
いいや、してしまったのか気がついてしまった。
僕がやってしまったの?
僕は押しのけただけなのに?
僕は
「ごめんヴィラ。ちょっとだけ、眠ろうか」
僕の意識はそこで途絶えた。
たぶん、シータお兄ちゃんの威圧で恐怖が到達したんだと思う。
あの後全員威圧で眠らせて、その間に腕を一応くっつけたから一応盗賊は生きているらしい。
でももう二度と会わないだろう。
起きた頃には何故かサイハテ村に着いていた。
あの出来事がまるで夢だったかのように。
そして、僕の力も平気そうな子というのが強靭なディナだったというわけだけど。
遊ぶというより、大抵はいじめられているのだが。
でも、それでも
「ディナが誰かにいじめられてるのは、とてもムカつく」




