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サイハテの村人たちは勇者がいなくても平気なようです 〜ただしご近所は魔王城〜  作者: 青咲花星


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第55話 恐怖という名の拘束

僕を見るたくさんの盗賊たち。

先程まで獲物を見るような眼だったのに、一瞬で恐怖へと変わる。

泣き叫ぶ人、逃げる人、腰を抜かす人。


僕は僕以外の彼らの視線を辿る。


そこには


「あの傭兵たちが最近の子供を狙った誘拐犯でーす!!!!変態ー!!!!!」


指をさしながらディナが叫んだ。

その声にはっとして、遠のいた意識が戻ってきた。


ディナは僕の手を掴んで路地裏に駆け込む。


「ヴィラ、大丈夫?」

「ごめん、大丈夫じゃなかった。ありがとう」


汗びっしょりだったようで、ディナはハンカチで額を拭ってくれた。


商店街の人たちが追いかけてくることはなさそうだ。

寧ろ近衛兵に突き出せー!と物を投げつけたり傭兵を袋叩きにしているようだ。


「サイハテが勇者のいない時にドラゴンまで討伐してるのに、お金に困って盗むわけないもの」


確かにそうだ。


「よく叫べたね。すごいよディナ」

「でしょー」


くすくす笑っていると、頭に大きな影が落ちる。

後ろから低い声が聞こえた。


「随分と楽しそうだな」


_____



「それで?通信から少しの間に何があったんだそっちは」


イダーテはラピスを抱えつつ、笑顔だが頬にはピンクの手形。

ラピスは腰にイダーテの制服を巻き、とても不機嫌なご様子。


「最後まで紳士的でいられなかった証よ」

「あー……」


エリーは察し、といった感じで掘り返すのもよくないと思い、現状の報告をした。


「商店街の奥の路地、ここで通信が途絶えちゃって。ディナのハンカチも落ちてたの。だからこの辺りの目撃情報を頼りに探してるんだけど」


「最初、傭兵が盗っ人として捕まえろって嘘をついて。でもディナが傭兵を最近の子供誘拐犯ですって叫んでたらしい」


「サイハテの子供を盗っ人呼ばわりねえ」


3人の目が黒くなる。

さっきのエミア様と同じ深淵のような目だ。


「あなたたちの怒りはとてもよくわかるんだけど、抑えてくれないかしら」


威圧と冷気がすごい。

猫に変身する魔力を強化にまわしておいて良かったかもしれない、とラピスは溜息を吐いた。


「でもまあ、ディナのおかげで追いかけてくる傭兵の数は減ったみたい。咄嗟にできて偉いよ」


「父さんが、ディナは母さんに似てすっごく可愛いからすぐ変態が追いかけてくる、その時はすぐに叫ぶんだよって仕込んでたからな」


「さすがシルディールさん」


「移動してるかもしれないけど、まだこの近くにいるのは間違いない。手分けして探そう」


「あ、でもエリーはどうする?」


エリーは通信機を持っていない。


「私は見つけたら上に向かって何か飛ばすわ」


そう言ってエリーはハンカチのあった周辺、シータは少し遠くへ走って行った。


「イダーテ、そろそろ降ろしてちょうだい」

「なんで?ラピス魔力切れてるから危ないよ?」


「いや、だからって……探すのに重いでしょうに」


「確かに手は塞がるけど全然重くないよ?」


羽根のように軽いよ?と余分な言葉を付け足しよるこの男。


「このままやるつもり?」

「普通にこのまま屋根登って探そうと思ってたけど」


「え?」


気がつけば屋根の上、空中を飛んでいた。

やっぱり足が速いとかの次元じゃない。


「ラピスが見えない方探すからそっち探してー」


イダーテがそっち、と指をさす。

目を回しそうになりながらも、そういうことかと目を凝らして探す。


「いた」


一瞬だけだが、ヴィラくんの薄紫色の頭がちらりと見えた。


「あのオレンジ色のレンガの建物の辺りにいるわ」


思っていたより距離がある。

でもエリーが行った方向に近い。


「シータ、エリーが行った方向にヴィラがいるみたいだから合流してー」


『了解』


その瞬間、横に真っ直ぐドドドドドと土煙が見える。

シータの能力って威圧だったわよね?と思わず確認した。


建物の窓ガラスとか割れていないといいけど。


______


聞き覚えのある男の人の声にしまったと思いきや、視界が煙で見えなくなった。


これは何?吸わないほうがいいのかな。

薬剤って反発できるのかな。

わからない。


そう考えながらとりあえず自分の口を塞いだ。

ディナと逃げなきゃ、と思い隣に手を伸ばしたが誰もいない。


別の方向から何かがどさりと倒れる音がした。


「ディナ?」


視界が開けると、地面にディナが倒れている。

身体の周りにもやもやと黒いものを纏っていた。


「え?ディナ?」


思わず膝をつく。

じゃり、と土の音がする。


隣ではなく、声のした方にいた。

庇おうとしてくれたのかもしれない。


でも、どうしてディナが倒れているの?

いつも僕の反発なんてものともしないのに、どうして?


「お、さすがだな。一発で仕留められるなんて」


ラピスお姉ちゃんを切った人だ。

普通の人よりは強いんだと思う。

ゼーダ傭兵団のリーダーなのかもしれない。

男がこちらに歩いてくると、ディナの腕を掴んで引きずり連れて行こうとする。

ディナがうう、とうめいている。


「待って!!」


男が振り返る。


「あ?なんでてめーは効いてねえんだ」

「僕が代わりに行くから、ディナを離して!!」


僕なら反発で効かない、刃物も通らない。

だからこれで時間を稼ぐしかない。


「やだよ、壁ぶち抜いただろ?拘束が効かないお前にまた逃げ出されたら困る」


男は刃物を持って、黒いもやもやを指す。


「この拘束は能力を封印する。どんなに頑丈な能力があってもこいつにかかればただの人間だ」


ディナの能力は強靭。

拘束されて能力が使えないってことは、あの刃物が通ってしまう。


「こいつを傷つけられたくないんだったら大人しくついてこい」

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