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サイハテの村人たちは勇者がいなくても平気なようです 〜ただしご近所は魔王城〜  作者: 青咲花星


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第50話 ワイバーン6頭分の食料

祝50話!

「思ってたよりでかいな」

「貰っていっていいのかしら」


とりあえず凍らせたけどどうやって運ぼう。

目の前でサイハテの村人たちは平然と話をしていた。

周りの人間たちはその様子を呆然と見つめている。


大蛇はあまりの差に思わず聞いた。


『サイハテよ、ソレの事は恐ろしくはなかったのか?』

「え?ワイバーン6頭分ぐらいの食料かなぁとしか。あ、でもいつもより周りに建物があったので、壊さないかこわかったです」


『お主ら、それを食べるつもりか?』


「「美味しいって聞いたので」」


村人たちは言った。


『ドラゴンだ。人間も食しておるかもしれんのだぞ?』


「そんな事言われてもねぇ」

「いつもワイバーンとか魔獣も美味しく頂いてるし」


大蛇は少し後ずさった。

大蛇の声は聞こえない筈なのに、何の話をしているのか察したのか周りの人間もちょっと引いてる。


「あ、話せる生き物は食べないのでご安心を」


そう言ってエルダの息子は木剣を使って一瞬でドラゴンを小分けの肉塊にした。

エリーという娘が更に表面を氷漬けにしている。

話せなかったらこうなっていたかもしれない、と大蛇は身震いをした。


あとそれって木剣だよな。

スパッと切れ味抜群に切り分けられるモノなのか?


「これ、後でいただいてもいいですか?」


エリーは騎士の一人に聞いた。


「えっと、我々だけでは決めかねるのでサイハテの方々が求めていたと上にお伝えしますね」

「お願いします。連絡はサイハテ行きならすぐに伝わると思うのでそちらに」


腰を抜かしたのか、座ったままの騎士からこんなにすごいんだったら護衛とかいらなかったのでは、と小さな呟きが聞こえた。


娘はハッとして、エルダの息子に呼びかける。


「そうだ、ごめん!ラピスたち置いてきたままだ!戻ろうシータ!!」

「すみません大蛇様、今ちょっと危ない状況でして。後で大掃除についてちゃんとお聞きします」


「騎士団の皆さん、大蛇様のこともうしばらくお願いいたします」


ぺこり、と丁寧に頭を下げる村人たち。

食料(ドラゴン)のことばかり頭にあって何やら大事なことを忘れていたようだ。

周りの人間はさっきより危ない状況ってどんな状況だ?と顔を見合わせた。

そして大蛇を見ては、え?もしかしてこうやって待たないといけないの?という顔をしている。


大蛇は村人たちが見えなくなると、ずるずると肉塊から離れた場所でとぐろを巻いて目を瞑る。

それにしても、あのどす黒いオーラは一体何だったのだろうか。

結界内におさまっていたが、明らかにやばいものだった。


(そういえばあやつらもやばい奴だったな)


笑いながら魔物を倒していくエルダ。

一瞬で森を使い物にならなくしたシルディール。


エルダはいつも大掃除をしてくれるし、シルディールは住処を壊した事を謝り倒して楽しい歌を聴かせてくれるので今は良き友人だが。


そういえば、あの娘が首から下げていたもの。

いつかの時代の討伐をしに来た勇者と聖女が持っていた物に似ている。

和解して語り合った際にこれがないと魔王を倒しに行けないんだと言っていた。


色々と世界の歯車がとち狂っておるようだが。

村人たちなら魔王が来ても倒せるであろう。

大蛇はふっと静かに笑った。


_____


「そういえばエリーが倒した方が新鮮だったんじゃないか?大蛇様に言われてつい倒しちゃったけど」

「ううん、私がやると落下地点がわからなかったからシータがやって正解」


風で浮かせるにしてもあの大きさでは難しい。


「それより、その木剣でよく倒せたね」


「威圧も使ったから。思ってたより頑丈みたいだ」


シータは紐の部分を軽く撫でた。


「一人でダンジョンにいる時しかできなかったけど、これならエリーがいれば他の人がいても狩りができそうだ」

「私、みんなより走るの遅いから狩りについてかないんだよ?」


シータは悩み、はっとした顔をして言う。


「エリーを抱えて走ればいいのか?」

「嫌よ」


乙女の体重がバレてしまうじゃないの。


シータがしょんぼりする。

あんなに誰よりも堂々としていたのに、今は仔犬みたいな顔をしている。

エリーはつい笑ってしまった。


「シータは案外、指示する側が向いてるかもね」

「指示役?」


「そ、怯えず的確に指示を出してたでしょ?声も出てたし」


「うーん、ただ食料をできるだけ新鮮に無駄がないようにって考えてたから……」


あれが怖いのがよくわからない、と首を傾げている。

彼が怖いと思うものはもしかしたら存在しないのかもしれない。

……いや、あるか。

豪快に笑う女性を思い浮かべた。


「騎士団に所属してたら一気に出世してたかもね」


エリーはふふふっと笑って言ったが、自分の言葉に思わず嫌だなぁと思い直す。

そうなったらシータはエリーの隣にいなくなってしまう。


「やっぱ今のはなし。威圧で全員気絶させる未来が見えた気がする」


ガンッとショックを受けている彼を横目にしていると、さっきいた場所にいつの間にか辿りついていたようだ。


「あれ?いない……」


あたりを見周す。嫌な予感がする。

路地も見ようと、歩いて行くと突然ガシッと手首を掴まれた。


「エリー!強化か保護魔法!!シータも!!全員目を瞑って!!」


イダーテお兄さんだ。

掴んでいる手がかすかに震えている。

言われた通りに強化して目を瞑るとぐんっと引っ張られる感覚がした。

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