第47話 おちゃめなメイドさん
朝食を食べに部屋を移動していると、メイドさんが音もなく現れた。
昨夜話をしていた暗殺部隊を思い出す。
「ラピス様。本日の件でお話が」
メイドさんはチラリと村人たちを見た。
「サリュ、いいわよそのまま話してちょうだい」
「は、東の森から大型の魔物が王都に向かっているとの情報が。小型、中型の魔物も混乱に乗じて一緒に王都に流れ込んできているようです。護衛を担うはずだった騎士団員も駆り出されている状況でして」
「それはそっちを優先するべきね」
「僕がこっちに戻ってきた後だったのかな、様子見に行こうか?」
イダーテなら一瞬で見てきてくれるだろう。だがラピスは断った。
「こうしてサイハテのお客さんがいる前で伝えに来たっていう事はサイハテの力を貸して欲しい程の状況なのかしら」
「おっしゃる通りです。勇者不在の為冒険者にも協力していただいているのですが、防御が硬く苦戦を強いられています」
「東の森の魔獣って、確かシルビアさんの言ってた大蛇の事だよな」
冒険者ギルドに行って依頼を受けてからエリーの魔力放出のついでになんとかするつもりだったのだが。それが予定変更となり、どうして森から出てきたのかはわからないが王都にまで来てしまった。
「大蛇、気のせいか何か引っかかるんだよな」
シータが考え込むと横からディナがつんつんと突いた。
「同じ蛇かわからないけど、昔お母さんがおっきい蛇と仲良くなったって言ってたよ」
「エルダさんが?」
「蛇はどっかの祀られていた神様の化身だったんだけど、お父さんが蛇の住んでた所を死の森に変えちゃったから、一旦東の森に移したって。そしたらそのまま気に入って東の森に住むようになったって」
その言葉に全員の顔が真っ青になる。
「討伐してもしなくてもやばいんじゃ」
「エルダさんにどうしたらいいか聞いてくる!!ラピス、移動したら教えて!」
イダーテが自分の耳を指す。
「ええ、でもそれは魔界領域に入ると使えないから出てから連絡を頂戴」
イダーテが風のように消えるとシータが提案した。
「オレたちも先に手伝おう。母さんで話が通じるなら交渉次第で止まってくれるかもしれない」
エルダの仲良くなったという話が、力業でという話でなければ良いのだが。
「今までは大人しかった。もしかしたら誘拐犯が東の森に何か良くないものを置いた所為で暴走したのかもしれない」
イダーテが言うには犯人グループは東の森に何かを用意していたらしい。
「ヴィラとディナは……」
「王宮だと貴族が出入りしてるから、もしかしたら一緒の方がいいかもしれないわね。占いの心配もあるけど」
離れている間に貴族に見つかって誘拐されたら困る。
「わかった、じゃあ二人は腕輪を外さないようにね。能力を抑えるペンダントはディナは外しておいて。ヴィラはいざとなった時は外してもいいから自分を最優先に守って」
ヴィラの顔が曇る。
村の外で外しても大丈夫なのだろうか。
「腕の一つくらいなら私がなんとかしてあげられるから大丈夫。最初に会った時もそうだったでしょ?」
エリーがヴィラに言う。
「腕一つまでなら大丈夫……」
腕一つで済むのだろうか。
「剣術科イベントの時は全然平気だったんだから大丈夫でしょ。そうだ、木剣とかあるといいんじゃない?」
「確かお兄様たちの使っていたものがあるわ。サリュ」
サリュと呼ばれたメイドさんはいつの間にか2つの木剣を持っていた。
「すごい、もしかして転移?」
「いえ、収納でございます。髪は黒いですが、先祖にサイハテがいまして。魔術も僅かですが使うことができます」
サリュが黒いメイド服のスカートを少し持ち上げると、どさどさと盾や防具、木剣やらが大量に出てくる。
「必要なものがございましたら」
「いらないからしまっておきなさい」
「さようございますか」
いらないと言われたサリュはスカートを被せ、元に戻す。
あっという間に出した武器は消えたが少ししゅんとして見えた。
「サリュさんありがとう、これで手加減できそうだよ」
ヴィラがにっこり笑う。
「……サリュは褒めると調子に乗ってやばいもの取り出してくるからやめて頂戴」
やばいものってなんだろう。
「大砲もありますがいりますか?」
「いらないからしまっておきなさーい、はーい出さなーい」
大砲ってスカートの中に入るものなのだろうか。




