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サイハテの村人たちは勇者がいなくても平気なようです 〜ただしご近所は魔王城〜  作者: 青咲花星


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第46話 そして心は一つになった

王都に来てから4日目の朝。

メイドさんに起こされて、身支度を整え廊下に出るとシータとヴィラもちょうど部屋から出てきたようだった。


「おはよう〜」

「おはよう……そっちはどうした」


シータは真顔でエリーの後ろにいる二人を見て聞いた。


エリーはあははと苦笑いをして返す。

そう、困ったことに


「……おはよう」


ディナはとてつもなく機嫌が悪そうで


「フシャー!!」


ラピスが人の姿なのに猫化している。


「ディナはね、ヴィラが実は自分より年上だって事を知っちゃってさ」


小声でシータに話す。

別の話で流れたと思っていたが、そうはいかなかったようだ。


「ラピスはよくわかんないけど」


シータは心の中で頭を抱えた。

昨日の事、イダーテの寝言はやはり筒抜けだったか。


「みんなおはよー!」


諸悪の根源もとい、イダーテがビシッと緑の制服姿で明るく元気に挨拶をしながらどこからか出てきた。

昨日朝だけ仕事をしてあとは休みにさせて貰うと言っていたが、制服のままだ。

もしかして私服を持っていないのだろうか。


「キシャー!!」

「あれ?ラピスどうしたの?」


エリーの後ろに隠れて明らかにイダーテを威嚇している。

どうどう、となだめようとするイダーテ。

寧ろ悪化してしまうだろう。

思わず目を逸らして頭を抱えた。


「シータ、何があったか知ってるの?」


それに気がついたエリーが聞いてくる。


「オレは知らない。オレは何も知らない、何も聞いていない」


そういうのって知ってるし聞いてるっていうんだよーと諸悪の根源の言葉にシータは長いため息を吐き、思わず絞り出すように声を出す。


「オレは!何も聞いてない!知らない方が全員幸せ!!」


オレの言った言葉の意味に気がついてしまったのか、ラピスの顔がどんどん赤くなっていく。


(ダメだ、どうする。このままじゃ色々と崩壊する!!)


「なんでだよ気になるじゃんか!!」


イダーテがしつこくうるさい。


「……わかった、イダーテ。ショックを受けると思うが、言ってもいいんだな?」

「え、今呼び捨てにしなかった?」


「言うぞ……昨日、イダーテ兄さんの歯軋りがすごくて「え?イダーテお兄ちゃん別にうるさくな……もご」


ヴィラの口を塞ぎながら話を進める。


「ラピスから貰った通信機、つけっぱなしだったって言ってただろ。だから、もしかしたらラピスも歯軋りが聞こえてたんじゃないかって」


一瞬の沈黙。


「ウソでしょ?え、本当?」


エリーの後ろでこくこくと頷くラピスに、イダーテから笑顔が消え、後ろによろめく。


「そっかー……ラピス、シータもごめんなさい。ヴィラも聞こえてたらごめんなさい」


先程の元気は一切失って、イダーテは壁を背に縮こまった。お目々が真っ黒になっている。

生きててごめんなさいとまで言い出した。


こういう表情になるのはサイハテ共通なのだろうか。


(本当は歯軋りよりもやばかったけど、真面目に反省しているみたいだからこれでいいかな)


最近の猫可愛がり変態度が異常だったので自重していただきたい。

イダーテ兄さんはサイハテの顔でもあるのだから、どこかでボロを出しては困る。

ましてや王女に迷惑行為を働いているとか、とんでもないゴシップになりかねない。


「それはそうと、お兄ちゃんもヴィラを離してあげたら?」


口は塞ぐのをやめていたが、両手で肩を掴んでいたのでヴィラが硬直している。


「ああ、ごめん!ヴィラ」

「んーいいよー」


何かを察したヴィラは返事だけした。

彼が一番大人かもしれない。


ラピスがほっとした様子でため息をついて、シータに向けてグッジョブと親指をたてる。

まともにラピスとコミュニケーションをとれたのはこれが初めてかもしれない。

今度はうまくやれた、とシータは胸を撫で下ろす。


一連の流れを見ていたエリーはシータとラピスの謎のやり取りに少し、もやりとした。

なんかみんないつの間にかラピスと仲良くなってる気がする。

思わずぎゅうとラピスに抱きつく。


「どうしたのエリー」

「ラピスは誰にも渡さない」


その瞬間シータの威圧が軽く発生した。

ラピスは予測していたのか瞬時に結界を張って回避していた。

威圧はされているが嬉しいのか笑顔だ。


「ラピス先輩相手でも発生するのね」


エリーのにぶちんといつもの兄の威圧にディナがため息をつく。


「何が?」


イダーテお兄さんが体操座りのまま顔を上げてきょとんとした表情で聞いた。


(至近距離にいたのに気がついていないの!?)


ヴィラとディナが衝撃を受ける。


サイハテ村でもシータの威圧は辛いと評判だ。

ヴィラとディナも自分の能力があるから耐えられている。

それでもシータの威圧は結構辛いものだ。


(シータお兄ちゃんの威圧を受ける人と受けない人の違いは一体……)


シータの威圧を受けても気がつかない原因(エリー)が離れないので、威圧がまだ続いていた。

このまま結界を張るのも辛いのでラピスはエリーの腕をそっと下させた。


「エリー大丈夫よ。私は決められた人としか結婚できないから」


ラピスはエリーに遠回しに安心させるために言ったのだろうが、にこにこと笑顔のラピス以外全員なんとも言えない表情になった。


そうだ、ラピスは王族だ。


「変な相手と結婚させられそうになったらその家門ごとぶっ飛ばしに行くからね、サイハテ総出で」


エリーの言葉にうんうん、と頷く村人たち。


ラピスは想像した。

サイハテ総出でぶっ飛ばしにきたらきっと王都におっきなクレーターができてしまうだろう。


「ありがたいけど断っておくわ、相談にはのってもらうかもしれないけれど」


苦笑いで断るラピス。

それでも村人たちの目は本気だった。

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