第44話 王城deお泊まり会① 戦力外の村人
〜王都近郊魔王軍〜
アンドラス様の命により王都の調査をして戻ってきた諜報員は唖然とした。
隠蔽されていたはずの基地でボロボロになって倒れている同胞たち。
軍は壊滅状態だった。
「一体何があったんだ!?」
辺りを見渡し、辛うじて意識のある仲間を起こして聞いた。
「王都の方から……竜巻が……突然出現して……」
「竜巻!?まさか魔術師が!?」
天気は良かったはずだ。竜巻なんて起きるはずがない。
だとすれば魔術師による魔法。
「わからない……天候は良かった……だが、魔術結界では防げなかった……」
「アンドラス様は」
「あちらに……竜巻の発生源の直撃を受けてしまい、救護班が手当を……」
そっと仲間を寝かせてアンドラス様の元へ急ぐ。
「アンドラス様!!」
「……戻ったか」
アンドラス様の体は全身包帯だらけで、翼もボロボロになっている。
救護班も力を振り絞って治療にあたっていたのか、横で倒れていた。
諜報員は思わず痛々しげに見つめた。
「一体何があったんですか?」
「……サイハテだ」
サイハテ?サイハテがもう王都に来たと言うのか?
「魔術師エリーではない。別の何者かだ」
アンドラスは竜巻の根源と衝突した。
衝突した際、一瞬根源は立ち止まった。
『ん?今何か弾いたようなー気のせいか。こんなところに人がいるわけないもんねー急ごー』
若い男の声。ほんの一瞬だったが、緑色の服に薄い髪色の姿。
あれは紛れもなくサイハテの村人だった。
「あれも化け物だ」
しかも微かに聞こえた鼻歌。
「ねっこねこ〜♪」と、楽しそうに軍を吹き飛ばして行った。
「我が軍はたった一人の村人に、一瞬で吹き飛ばされたのだ」
空中戦に長けた戦術で魔王軍最強と謳われたアンドラス。
プライドも何もかも失ったアンドラスの瞳は光を失っていた。
もはや絶望的な状況。
魔王軍は撤退するしか道はなかった。
_____
〜王城の客室にて〜
このまま野放しにしていても後々困るだけだろうという事で、結局明日は騎士団に護衛を頼んで残りの傭兵たちを捕まえる事になった。
お菓子屋さんに行くのは最終日に延期だ。
「わーふかふかだー」
「ふかふか、これ、壊れないんだよね……?」
村人男子たちは高級そうなベッドで転がっていた。
窓際にイダーテ、真ん中のベッドは壁がないのでヴィラ、ドアの近くにシータ。
イダーテはラフな格好になっていつの間にか完全に寝るスタイルになっていた。
「イダーテ兄さん、風呂は?」
「ごめんさっきお先に入りましたーいつもだったらもう寝る時間なんだよねー。だからすぐにでも寝そうで……」
スヤッ
「寝ちゃったね」
「寝たな、ヴィラ先に風呂入っときな」
朝早くに配達しているので寝るのも人より早いのだろう。
枕を抱いたまま、布団が掛かってなかったのでシータが掛けておく。
(ん?なんか耳についてるけど大丈夫なのか?イダーテ兄さん、耳飾りなんてつけてたっけ)
勝手に取るのもあれだし、起きそうに無いのでそのままにしておいた。
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一方その頃女子部屋。
3人で一緒にお風呂に入った後、エリーが風魔法で一瞬で髪を乾かしてラピスに借りたお揃いのネグリジェ姿になっていた。
サービスシーンがなくて申し訳ない。
ネグリジェで我慢していただきたい。
「ところで占いの悪い結果ってどんなものなの?聞いちゃいけないやつ?」
「曖昧だからわからないけど、4人のうち誰かが何か良く無い目に遭うことがわかっているわ」
「イダーテお兄さんは?」
「助っ人じゃないかしら」
どこへでも移動できる鳥がおそらくイダーテの事だろう。
自分の事は占えないのでラピスは占いにはでてこない。
イダーテお兄さんが助っ人かぁ、とエリーが呟く。
「イダーテお兄さん、配達のお仕事でしか見た事無いけど強いの?」
わくわくしながらディナが聞いた。
「いや、逃げ足だけは速いからねっていつも言ってるから、戦えないんだと思う。剣術稽古も狩りに参加しているとこ見た事ないし」
イダーテお兄さんとは歳はそこまで離れていない。
だけどあまり一緒に遊ぶ事はなかったから配達のお手伝いで見かけた事くらいしか見たことがない。
今のシータみたいにディナとヴィラの稽古をみたりすることもなかったようだ。
「あれで戦えていたら、暗殺部隊にスカウトされていたわね」
そんなものあるのと目を見開くディナ。
「さあ、どうでしょう」
ラピスがふふっと笑いながら言った。




