第43話 赤く染まった木剣とデスボイスレコーダー
「ほぇーどこもかしこもおっきい……」
「壊しそう、絶対高い、怖い、触らない方がいいよね、これ壊したら弁償だよね?」
壊したら一瞬で僕は奴隷になるんだと、久しぶりに泣きながらブルブル震えているヴィラを引っ張りながら進むディナ。
「大丈夫よ、どうせギロチンの刃も反発できるんじゃない?」
処刑前提で話すディナにヴィラは処刑されそうにもなりたくないよぉ〜と泣き言を叫んだ。
「どこも強化してあるから大丈夫よ。壊れたら元々そこが問題があったって事だもの。気負わなくて大丈夫よ、寧ろ綻びを見つけてくれたらありがとうだわ」
「ラピスお姉ちゃん……」
ヴィラの中でラピスの株が爆上がりしたようだ。
「シータたちはこっちの部屋を使って」
(わぁ、結界が何重にもかかってる)
何が付与されているか見えるエリーは苦笑いをする。
これで威圧が外に行く心配もない。シータにピッタリだ。
「強化も沢山重ねがけしてあるから大丈夫よ。夕食が用意できたらメイドが声をかけるわ。それまでゆっくりしていてちょうだい」
そう言ってエリーたちも部屋に案内される。
「……その、私も一緒の部屋で寝ても良いかしら……女子会がしたいなと思って」
「私もラピス先輩と女子会したい!」
彼女も人見知りが激しく身分の所為で後輩というものがいないのに等しかった。
なので先輩呼びにディナちゃん、と目を輝かせるラピス。
「やっぱりどうして私だけ呼び捨てなのー!?」
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王都の退廃地区、酒場の2階。
「クッソ帰って来ねえ!!バレたのか!?」
リーダーらしき男がイライラを机にぶつけた。
「教会に入って行ったのが最後らしいです、どうやら突然氷漬けになって入院させられているとかなんとか」
「天罰の聖女エミアか。なんか前に記事で見たな。写真では美人だったがあの顔は絶対腹黒いし関わりたくない女だ。でも何故こちらまでやりに来ない」
その認識はあながち間違ってはいない。
「アジトや計画はバレてないってことなんですかね」
「おい、あいつの居所の確認でつけられたりはしていないだろうな」
「ひぃ、だ、大丈夫だと思います。教会から出てきた人間が話していたのを耳にしただけですから」
ならいい、と男は足を机の上にのせた。
「お貴族様からの依頼とはいえバレたら即処刑もんだ。明日の計画は確実に決行する」
「東の森に例の物は既に用意してある」
その言葉によしと頷く。
「その後はとっとと金を回収してずらかるぞ」
サイハテを敵にまわすのだ。
できるだけ反対側の国に行って離れよう。
そう考えている彼らはドアが少し開いていることに気がつかないでいた。
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夕食後、イダーテが敵の思惑を話し始めた。
「というわけでついでにアジトを突き止めてきたよ」
「どういうわけでそうなるのよ」
ラピスは頭が痛くなってきた。
部屋を案内していた時、やけに静かだなぁと思っていたらそんなことをしていたらしい。
正直その辺の間諜より有能だ。
「何人かハイエナ2匹描かれた紋章をつけていたけど」
「ハイエナ2匹……ゼーダ傭兵団ね。最近大人しいと思ったらそんなことを企んでいたのね」
ゼーダ傭兵団
昔から存在する貴族から依頼を受けて魔物を狩る戦闘集団なのだが、少し前にリーダーの交代してからは柄が悪くなったと聞いていた。
東の森に何かを隠しているようで、アクセサリー屋さんが言っていた対サイハテの拘束具かもしれない。
「それにしても貴族がねぇ……」
エリーは目を黒くしながら静かに魔力を小さな箱に流し込む。
魔力放出をする場所を探している事をラピスに話したところ、その力は魔導具に込めて欲しいと言われてやっていた。
怒れば魔力が魔導具に貯まる。
魔導具は犯人を捕まえる事にも使えるし、ウィンウィンだ。
それでも漏れ出ているのか、部屋が若干涼しい。
魔術に使う魔力と違って能力は貯めておけないので、密かにいいなと思いながらシータはサイハテとの繋がりをどこまで伝えてあるのかをラピスに聞いた。
「貴族にはエリーと、サイハテと交流がある事は言ってないのか」
「言ってないわ、迷惑かけてしまうかもと思って。お父様が絶対にサイハテに手を出すな、手を出したら見捨てるとは言ってあるはずなのだけれど」
ラピスのお父様=この国の王様
という事実に未だ慣れない村人たちは頭の中で頑張って変換した。
「そうそう、サイハテにいる村長さんにも連絡しておいたよ。そしたら『煮るなり焼くなり、氷漬けにするなりしてもらって構わない。もし逃げられそうになったら私が直々に燃やしに行ってもいい。いつでも手は貸そう』だってさ」
顔芸と声真似をするイダーテに村人たちは冷ややかな視線を送る。
「「「似てない」」」
「さいですか」
イダーテはしょんぼりしながら続ける。
「他にも色々託されたよ。|シルディールさんの声入り録音機、こっちはシータに。エルダさんの使ってた木剣」
いつの間にか持っていた物をゴトリゴトリと机に置く。
どちらもどこか禍々しく、シータにと言われたのに全く触れようとしない。
イダーテももちろん手袋をしている。
「ものすごくいらない」
「お母さんの木剣は欲しい」
親の生み出した危険物に兄と妹、雲泥の差の表情を浮かべている。
ディナがキラキラとした目で木剣を見て、兄のシータを見たが彼は体格に合わないしまだ早いと首を振った。
「これ、僕が返しちゃうと恐ろしいことになっちゃうから使わなくてもいいから回収して欲しいなぁ」
木剣はなんか、木の色をしていないような気がするけど使えるだろう。
「そうだな、木剣だけ使う。けど、父さんのそれは危険物すぎるから王宮で封印して欲しい」
「使うとしたら、完全に防音にして拷問とか?」
「間違えてスイッチ押さないように結界張っておくね」
録音機は箱に入れてエリーが結界で囲む。
これで間違えてスイッチを押しても被害は出ないだろう。
「……触りたくないなぁ」
シータの眉間に皺が寄る。
「あ、そうだ」
エリーがいつも持ち歩いているバッグから白い布を取り出した。
「これ、シータの左腕に使ってる包帯。保護魔法がかかってるから、持ち手に巻き付けておいたら?」
なるほど、とくるくる巻き付けてみる。
「禍々しさが抑えられて痛々しさはあるけど、さっきよりはいいんじゃない?」
「痛々しさ……」
「じゃあこれをこうしてみたら?」
エリーが魔術のインクでサイハテの紋章を描き、包帯を紐状にして一部を黄色と赤色に染めて結ぶ。
「村の骨董品ぽくなった!かっこいい!」
ヴィラが感動して声をあげる。
シータも目を輝かせているようだ。
「イダーテ兄さん、母さんにありがとう一生使うって言っておいてくれ」
一生使うんかい。
そしてシルディールさんには何も言わなくていいのかな?




