第34話 村人会議
「あ、トマト料理専門店に入ってったね。男は入らずに外にいるみたい、どうする?」
コロッケを食べ終え、持っていたゴミはいつの間にかイダーテに回収されていた。
「本当は捕まえられたらいいのだけれど」
「僕は非戦闘要員のただの村人だから無理だよ。狩りも危険だからって禁止されてるんだ」
ただの村人って王都とサイハテを数分で往復できるものなのだろうか。
「私も攻撃魔法は苦手なの。男がエリーたちから離れたら、二手に別れましょう」
「わかった、じゃあそれまでは監視だねー僕は男の方を追うよ。何かあっても逃げ脚だけは早いから」
そうだ、とラピスはカバンからイヤーカフを取り出す。
「小型通信機。これがあれば離れていても会話できるわ」
強化魔法もかけてあるので頑丈だ。
使い方を教えるとイダーテは耳に嵌める。
「へぇー便利だねー普及したら僕の仕事減っちゃうや」
「対になってるものとしか繋がらないから普及は難しいんじゃないかしら。そういえばサイハテには通信機ってないのよね」
「魔素が通信を妨害するからねーあとそういう機械、すぐ壊す村人がいるから」
エリーと手紙だけでなく通信でやり取りできたらと思っていたけれど、魔素で妨害されてしまうのか。
ところで後半聞き捨てならない言葉を聞いた気がするけど。
「シルディールさんの家系、あ、シータのお父さんのことね。血筋がね、拡散系の能力を持った人たちなんだ。一度村の放送として拡散機を取り入れたことがあったのだけど、使おうとしてたらちょっとした悲劇が起きてしまって、シルディールさんが悲しい歌を歌ってしまったんだ」
「それの何が壊れることになるの」
「エルダさんが狩りに夢中になって迷子になって帰ってこなかった事があって。ちょうど拡散機のテストしてたんだよね。シルディールさんの能力は悲しい歌を歌うと聞いた人の生命力が奪われちゃうんだ。拡散機も一瞬で力尽きて壊れちゃったから、被害も拡散されずに済んだけど」
「そのまま拡散されていたら大惨事じゃない」
サイハテが全滅していたかもしれない。
「かろうじて死人は出なかったから本当によかったよ。そういう事があるから村では魔導具とか便利なものは中々使えないんだ」
〜サイハテ村長宅にて〜
「ベックしょい」
「ダーリン、風邪か?」
シルディールは鼻をかんだ。
「うーん、誰かが噂してるのかなー」
「ダーリンの噂をするなんて許さん」
「あはは、風邪じゃないだけいいじゃない。そういえばエルダさんは風邪ひいた事ないよね。丈夫だよね〜すごいよね」
「ああ、確かに私は風邪をひいた事はないな」
(馬鹿は風邪を引かないと言うからな)
村長は紅茶を飲みながら心の中で呟く。
「それで、どうして僕たちは呼ばれたのかな?」
「狩りに行くところだったけど、何か厄介事か?」
狩りはしばらくいらないと言っただろう、今日も行くつもりだったのか。
村長はため息をつくと言った。
「イダーテから、エリーたちが危険かもしれないとの連絡をもらった」
エルダとシルディールの眼光が鋭くなる。
狩りをする時の眼と同じだ。
「おそらくだがエリーとシータはそこまで危険ではない。問題は子供たちだ」
「能力封じか」
「シータは剣術が使えるし、気配も察知できるからね」
私が鬼ごっこで仕込んだんだぞ、とエルダが胸を張る。
シータはその鬼ごっこという名の恐怖の特訓にいつも逃げていた。ヴィラのように。
彼の場合はすぐに諦めて悟った目をしながら鍛錬をしていた。
村長は偉そうに言うな、という目で一瞥する。
「僕たちがいた時は静かだったよね」
「子供は連れていなかったからな。魔力封じがどういうものかはわかっていない。だからこれを機に誘き出そうと思った」
「つまり、村長くんはディナとヴィラを餌にしたということかい?」
いつもは温厚なシルディールのこめかみに血管が浮き出る。
「どのみち解決しなければ、危険に晒されるのは同じだ。だからエリーも行かせたのだ、警戒しすぎて誘き出せないと困るから詳しい事は知らせてはいないがな」
エルダはシルディールの肩に手をポンとのせる。
「まぁまぁダーリン、これも試練ってやつだよ。シータの時も最後はこいつが助けてくれただろう?」
シータがエリーと一緒に禁止区域に行って大怪我をしまった時、村の外遠くにいたのにもかかわらず知らせを受けてわざわざ帰って助けてくれた。
「うん、そうだね。村長くんにも考えはあるんだよね。ごめんね」
「いい。こちらこそ事後報告になってすまなかった。ディナとヴィラを選んだのはサイハテの子たちの中で一番適していると思ったからだ」
「確かにヴィラの反発なら壊せちゃいそうだねぇ」
ディナの強靭だったら耐えられるだろうし、捕まってもその間にヴィラが壊せばいい。
「ただ、あの子には一つ欠点がある」
二人はエルダを見る。
「……トラウマで自分から能力を使えない事だね」
なんで私を見るんだ?とエルダは首を傾げた。




