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サイハテの村人たちは勇者がいなくても平気なようです 〜ただしご近所は魔王城〜  作者: 青咲花星


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第29話 帰ってきて

「シルビアさんただいま帰りましたー!!」

「あらぁおかえりなさい〜」


宿に帰るとシルビアさんがニコッと笑って迎えてくれた。


「見学はどうだった?と言ってもその顔を見る感じ大成功だったみたいね♡」


「楽しかった!」

「はい、楽しかったです!」


ディナとヴィラが元気よく返事をする。


「うふふ、後で夕食の時にでもまた聞かせてちょうだい〜」

「あっそうだ、シルビアさんお菓子ありがとうございました!」


「ありがとうございました!とても美味しかったです!」


特にクッキーがさくさくで美味しかったとディナを興奮するヴィラが裾を掴んで止める。


「よかった、口にあったそうね。人気のお菓子屋さんのなの。気に入ったのならまた地図かいてあげるから行ってみて〜」


「色々とありがとうございます」


今日は全員疲れただろうし、明日はお菓子屋さんに行って昼食は昨日教えてもらったトマト料理のお店にして、ゆったり早めに戻ろう。

シータなんてずっと剣術科生徒の相手してたもんね。


いいのよ〜とシルビアさんは手をパタパタして夕食の準備に戻った。

エリーはまだ二日だけど本当にシルビアさんにはすごいお世話になっているから、何かお礼をしたいなと考える。


「シルビアさん、何か困ってることがあったらお礼に何かしたいな〜」


シータが頷いた。


「まだ滞在するし、おいおい考えよう」


そうだね、と返すとシルビアさんからできたわよーと声がかかった。

今日のご飯もとても美味しそうだ。


_______


〜その頃魔王城にて〜


「つらい」


頬杖をつきながら、放心状態で思わずそうこぼした魔王。


「わかります」


それに返事をする宰相。


今は誰もいないのをいい事に、ぽろりとこぼす。


「魔王、辞めたい」

「私も辞めたいです」


二人は顔を見合わせた。


「え、」

「え?」


本当に辞めたりしないよね?と目で訴える双方。

そして再び長いため息をつく。


「帰ってきてくれないかな……誰がとは言わないけど」

「わかります、口にしてはいけないのはわかってるんですが」


魔術師エリーに帰ってきてほしい。


まだ二日目だというのに、この惨状は酷すぎる。

村人たちは好き勝手し放題。

村長らしき者からは謎の突進物の贈り物。

謎の自然災害、サイハテ為災害。


「いっそ魔王()が討伐されたほうがマシなのでは?」


魔王の眼はガチだった。


「今討伐されたら責任全部押し付けられて私も晒し首じゃないですか。やめてくださいよ、逃げないで下さいよ?私が宰相辞めるまで」


だめかぁ、そっかぁ。

逃げたいなぁ。


「それに魔王様の後継はまだ全然育ってないじゃないですか。貴方の息子まで面倒見るつもりありませんからね、嫌われてますし」


「そんなこと言わないでよ。一緒に頑張ってきた仲じゃないか」


「誰が好き好んで滅亡の時まで付き合うと思いますか?愛する者ならまだしも」


まぁ私は愛する者なんていないんですけど。

と自虐的な宰相。


魔王は首をすくめた。


「正直、何故襲撃して来ないかが不思議なんですよね。サイハテ村」


あんなに毎日のように元気に飛び火で殺しにかかってくる癖に本格的には襲ってこない。


「なんかもう性格悪いよねー」

「本当ですよねー」


思わず悪口が出る。

そして思わず悪口が出たところで、大きな爆発音がどこかでした。


「今度はなあに」

「正門がまた壊れたようです」


ははは、と乾いた声が響く。


「……はぁ」


魔王がだらしなく椅子にずるずると沈み込む。

もはや、みに行く元気がない。

というか、みたくもない。


『マジで帰って来ないかな魔術師エリー!!』


二人は心の中で叫んだ。

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