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サイハテの村人たちは勇者がいなくても平気なようです 〜ただしご近所は魔王城〜  作者: 青咲花星


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第28話 本物疑惑

「「よかったら最後一緒に写真を撮ってくれませんか?」」


人が少くなった頃を見計らってかセラルーが提案してきたので、外に出ると夕焼け色に染まっていた。


「わぁ真っ赤」


「セラルー、今日は本当にありがとう。すごくわかりやすかったよ」

「「ふふふ、最後まで役得でした」」


「ガルドア先生にシャッターをきってもらおう」


ガルドア先生は嫌そうにシータに引き連れられて来たが、気絶顔を撮られるよりはまあいいかと呟きながら目を細めている。


「はいはい、みんな並んで〜撮るよ〜?」


急にノリノリになるな。


「はい、チーズ!」


パシャ


「ちゃんと撮れてる」


シータが確認し、私も確認してみた。

思ってたよりちゃんと撮れている。


せっかくだからとペンダントを服の外に出したがきらりと光っていて綺麗だ。


「「ガルドア先生、ハイチーズはもう古いらしいですよ」」

「何気にいつも酷いよね、君たち。じゃあなんていうのさー」


3・2・1っていうらしいですよとセラルーが言う。

あの二人、最後まで同時に喋ってたな。

分かれて喋る事ってあるのかな。


「そろそろ帰ろっか」


「「帰っちゃうんですね、もうこのまま学院に残っていいんですよ」」


それはちょっと嫌だ。


「「せめての悔いは、お二人との学院生活ができない事です……」」


そう、ディナとヴィラが学院に行くとしても、その年には双子は卒業してしまうのだ。


「「せめて、チケット送るので文化祭来てくださいね。楽しい催しいっぱいあるので」」


流石に戦闘はないと思うので。

とセラルーは付け加える。


「もちろん!」


二人もうんうん、と頷く。

セラーとラルーはその様子に微笑んで、礼をとる。


「それでは本日の学院見学案内、セラーと」

「ラルーが担当させていただきました」


「「またのお越しをお待ちしております」」


_____



「想像以上だったわねぇ……」


学園長は帰って行くエリーたちを眺める。

魔術の高みにいるヴァルド先生を凌駕する魔法。

息が切れることのない、一日中戦っていられる剣術。


「あの時から、強いとは思っていたけれど」


おそらく、エリーがペンダントをしたまま次点の優秀者を倒し、その場にいた全員をシータが威圧して屈服させたあの時の倍以上に強くなっている。

もしかしたらあの子たちが魔王を倒してしまうんじゃないかと考えてしまうくらいに。


「それにしてもあのペンダント」


ヴィラも気にしていた、シータがエリーに贈ったというペンダント。

白い花に金色の宝石。


学院長は古い物語の本を開く。

そこに描かれているのは百年に一度一輪だけ咲き続ける花と宝石のような実。


勇者の試練の一つであるダンジョン最終階層の宝。

世界樹の花と世界樹の実。


「まさか、本物だったりしてね」


もう一枚、ページを捲る。


「でもこっちはきっと、本物」


ふふっと学院長は笑って、言葉を指でなぞる。


『花言葉:永遠にあなたを想う』


______


〜その頃、勇者一行〜


「ない、ない!ない、ない!何故!!ない!!」


勇者は宝箱を開けては叫んでいた。


「おかしいですね。宝箱、全部空っぽだなんて。敵もボスは全部倒されていましたし」


念の為、神官が周りを警戒をする。


「誰かが先に攻略しちゃったとかー?」


獣人の尻尾が垂れ下がった。


「でもそんな記録ないんでしょ?」

「ええ、ここのダンジョンは難易度SSSの最高ランクの一つ。大人数で入ったとしてもそう簡単にはクリアできない筈です。挑戦した者は大勢いましたが、記録は十階層で止まっていました」


「ギルドに登録せずに、ダンジョンに入ったのかしら。ギルドカードを持たない者は立ち入り禁止のはずだけど」


「……いえ、登録はしていたけれど、もしかしたらその日限りで記録をつけていないのかも知れません」


神官は何かを思い出すように言った。


「どゆこと?」


魔術師が顔をしかめる。


「学生時代、ギルドで変な噂があったんです」


一人、男子学院生がギルドに登録したその当日。

たった一人でダンジョンに入って魔獣や魔物を狩って持って来た。

しかしその量が一人にしてはあまりにも多く、怪しくもあったのでこれ以上は支払えない、と言って他のギルドへ行くように勧めた。


その学院生はじゃあ村で消化すると立ち去り、ギルドに顔を出したのはそれっきりだった。


数日はダンジョンに何度もその男子学院生はふらりと現れ、奥まで進んでいくのが確認されていたけれども、1ヶ月後、彼はぱたりと来なくなってしまった。


何度も見かけていた冒険者はダンジョンで行方不明になっている可能性がある、と学院側に問い合わせたが、ちゃんと全員居るとのことだった。


「しかもその男子学院生、木剣しか持ってなかったんです」

「木剣?剣術科が使ってたやつ?」


「ああ、あの狂ったイベント」


 どうやら勇者もあのイベントは好きではなかったらしい。


「ええ、でも木剣はこのダンジョンでは流石にすぐに壊れます。魔術師か神官でも連れて入らないと、無理でしょう」


勇者とは最初から一緒にダンジョンに入っている。

見ての通り、一人では攻略不可能だ。


同級生で、なんでも倒せそうな能力を持った学院の剣術科の男子生徒。

そんな生徒、一人いたなぁ。


「まっさかぁ〜」

「あはは、そうですよねぇ」


神官が最終階層まであともう少し。行きましょうか、と言うと勇者は叫ぶ。


「最後の宝だけは!!残っていてくれー!!」


最終階層の宝、世界樹の花と宝石。

それは魔素の影響を受けにくくすることができる宝。


それがなければサイハテ村に辿り着くことも、こちらからエリーにも会うことすら叶わない。


「俺はそれを持ってエリーに告白するんだ!」

「「「フラグを立てるなー!!」」」


全員が勇者にツッコミを入れる。


勇者は知らない。

もう既に、全てが叶わぬ夢である事を。

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