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サイハテの村人たちは勇者がいなくても平気なようです 〜ただしご近所は魔王城〜  作者: 青咲花星


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第27話 氷の大剣

エリーの魔法は何度か見たことがある。

よく狩りの手伝いや、私たちが剣術の稽古をしている時に結界魔法やひょいひょいと風魔法を使っていたり。


手足のように、当たり前のように使っていた。

でもこれはそれとは全然違う。

こんなに大きな魔法、見たことない。


「エリーがぶちギレてる……」


というか、すごく寒い!めっちゃ寒い!!


「「こちらへ」」


ガチガチと体をさすっているとセラルー先輩がちょいちょいと手招きをしてくる。


「「失礼します」」


ぎゅっ


「!?」


私とヴィラ、それぞれが後ろから抱きつかれたと思えば、寒さが一瞬でなくなった。


「「温感魔法です、あったかいでしょう?」」

「これ、抱きつく必要あるんですか?」


「「ないですが、あったかいでしょう?」」


ないんかい。


「「あれ?ヴィラくんまだ寒いですか?」」


ヴィラが反発しないようにガクブルしてる。


「そういうんじゃないの。ヴィラは誰かに触られるの慣れてないから。そのままやっちゃって」

「えええええ」


ヴィラを無視してエリーの方をみると、まだ睨み合いが続いているようだ。


「ヴァルトは今日死ぬかもしれん」


先程までお兄ちゃんと戦闘をしていたおっさんが物騒なことを言い始めた。


「エリーは私たちの前ではそんなことしないもん……たぶん」

「そうだよ、ちゃんと寸止めするよ……たぶん」


うんうん、とお兄ちゃんが頷く。


「ただ。あの大剣はオレも見たことないから、どうなるかは知らない」

「「治癒班、修復班、直ちに応援要請を。周りの避難もお願いいたします」」


警戒レベルが跳ね上がった。

______



「ヴァルト先生はお変わりないようで」

「うむ」


魔術科教師、ヴァルト・シュタインは人生で最大の危機を迎えていた。

簡潔に説明すると、落ちこぼれだったはずの教え子が魔王になってかえってきた!みたいな感じだ。


「先生にはとてもお世話になりましたね。サイハテの落ちこぼれなんて見たことがなかった、お前はこの先も落ちこぼれ、サイテイヘンが私の授業を受けるなど、と口では言いつつも、ちゃんと授業はしてくださったので。おかげさまで原因を取り除いた後、」


「ちゃぁんと、こんなに簡単に魔法が使えるようになったんですよ」


ペキペキと、作り出される氷の塊が、エリーの手によってバキッと握り潰される。

その姿はもはや魔落ちした魔術師、いや魔王のよう。


「氷魔法だけというルールなので、他の魔法をお見せすることができず残念ですが。先生がご存知の通り、私の得意魔法は氷なので」


あの頃とは違う、まっすぐに見つめてくる復讐に燃えた瞳。

小さな結晶は、大きな大きな剣となって帰ってきた。

生徒たちを扇動した過去の自分を恨んでももう遅い。


「ヒッッ」

大剣(コレ)でいきますね」


行け、というかのようにエリーが手を下ろした。


_______



「思ってたよりはやかったな、打たれ弱かったのかな」


エリーがツンツンとヴァルト先生の顔を小枝でつつく。


何処から出したの、その小枝。


ヴァルト先生は気絶した。

それはエリーの攻撃を受けたからではなく、受ける前に恐怖で気絶したのだ。


「セラルー、カメラとかない?」


「「ありますよ?記念撮影でもしますか?」」


「ヴァルト先生の顔だけでいいよ」


セラルーからカメラを受け取り、写真を撮る。


「報告用だから」


エリーは印刷したらちょうだい。ああ、でも写真は好きにしてもらっていいよ、とカメラをセラルーに返した。


「「ありがとうございます。記者部に売りつけますね。見出しはどうしますかね」」


「横暴教師、教え子のサイハテの氷の大剣に気絶!?とか」

「華麗なる氷の剣舞、教師を圧倒!とか」


やんややんや、何処から出てきたのか治癒科の生徒が出てくる。


「「これで魔術科のカーストがなくなったらいいですね」」

「まだあるの?」


思わず呆れた声が出た。


「「ええ、明らかに魔術によるものではない怪我をする生徒がちらほらいまして」」


私たちは魔術による怪我を治療したいんです、と生徒たちは言っていた。

いやそもそも怪我をしない方がいいと思うのだが。


ヴィラとディナが駆け寄って来て、ぎゅっとエリーに抱きつく。


「ごめん、寒かったよね」

「ううん、大丈夫。エリーはもういいの?」


「大丈夫。超すっきりしたから」


シータはガルドア先生を見る。


「まだやりますか?まだできますよ?」

「いいや、降参だ。勘弁してくれ、こっちは負けるとわかっててやってたんだ」


ガルドア先生は木剣を地面に置いて両手をあげる。


ヴァルト(そいつ)はサイハテのサイテイヘンが、恥晒しに来るとか言ってたが全くそんなことはなかったな」


「へぇ?」


シータの威圧が微かに感じられる。


「待て待て待て待て、俺はそうは思っちゃいない!!あの娘はむしろ優秀だろ。学院初、一人で第六図書室に辿り着いたんだから」

「「「え?」」」


全員がエリーを見た。


「あ、やっべ」

「ガルドア先生、それは話してはいけない約束の筈でしたが?」


後ろから大きな魔術師の帽子をかぶった少し年老いた女性が現れた。


「すみません、学院長」


ポリポリと顔をかくガルドア先生。


「エリー、第六図書室に行ったことあるの!?」

「はは、条件は達成するのは大変だったけど入るのは簡単だったよ」

「どうやって行くの!?」


ディナがエリーを揺らす。


「それは〜内緒〜。でも、どうしても行きたかったら高みを目指さないと無理かな」


「勉強を頑張るか、魔術を極めるか、それぞれの分野で極めるか。何かしらの高みを目指さないとあそこには行けない。セラルーは優秀だし、ディナやヴィラなら行けるかもしれないね」


「でもお兄ちゃん行けなかったよ!?」


ざくり、と言葉がシータに刺さる。


「んー確かに興味がない騎士科には難しいかもな〜」


あはは、とフォローしておく。


「学院長、妹が騒がしくてすみません。お久しぶりです」


シータが頭を下げた。


「いいえ、私の方こそごめんなさいね。突然イベントに巻き込んでしまって申し訳なかったわ」


ずっとお灸を据えたかったの、と学院長は運ばれて行くヴァルト先生を見る。


「……私は楽しかったけど、お兄ちゃんもエリーも大変そうだったから次からはやめてほしい……です」


エリーの後ろに隠れつつ、ディナが呟く。

学院長はディナに笑いかける。


「そうよね。ごめんなさいね。次からはちゃんと事前に説明するようにするわ」


次があるんかい。


「エリーさん、あなたが魔術をまともに使えなくなった原因はペンダントかしらとは思っていたのだけれど、訳あってつけていたのだとばかり。何も助けになれず申し訳なかったわ。私からも謝罪させてください」


頭を下げる学院長。


「そんな、頭あげてください。無知だった私が悪いのですし学院長が勉学だけでも評価してくださったおかげで第六図書室にも行けたわけですから」


それにほら、とエリーはペンダントを取り出す。


「シータが、もっと素敵なペンダントをくれたんですよ」


だから大丈夫です、とエリーは微笑む。


「エリーさん、それは……いえ、とても素敵なペンダントですね」


学園長は一瞬目を見開いたが、にこりと笑った。

そしてディナとヴィラに向き合う。


「お二人とも学院はどうでしたか?嫌いになってないといいけれど」

「「なんだかんだ楽しかったです」」


セラルーみたいに重なる声に、思わず笑いが湧き起こる。

どうやら学院見学は大成功だったようだ。

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