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サイハテの村人たちは勇者がいなくても平気なようです 〜ただしご近所は魔王城〜  作者: 青咲花星


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第26話 天使のお迎え

「「お見事です、生徒全員倒してしまいましたね」」


セラルーが二人に拍手を送る。

シータも出番がなかったし、壁や柱も無傷だ。


「もう終わっちゃったの!?でも楽しかった!!」


目をらんらんと輝かせているディナ。

ヴィラは木剣を見つめていた。


「僕にもできた……」

「よかったね、ヴィラ」


「うん!付き合ってくれたお兄ちゃん達にお礼を言わないと」


たたたっと駆け寄って、倒れている剣術科の生徒にありがとうございましたと言って周る。

え?天使のお迎え?という言葉がちらほら聞こえてくる。


この日を境に、ヴィラとディナは剣術科と治癒科の間で『殲滅の天使』という二つ名を手に入れた。


______


「「こちらが魔術科の第五図書室です。危険なものも多いので本には触らないようにしてください」」


壁一面の書物。

ちらっと覗いた第一図書室より本が古そう。


「危険なものって?」


「「例えば、本を開いた瞬間メルヘンなお伽噺の世界に転移するとか、魔界に転移して気が付けば魔王の目の前で処刑されてしまうとか」」

「それって勇者だったらとても便利なものなんじゃ?」


ヴィラが真面目に返す。


「「あははー冗談ですよ、陣を使った転移魔術なんて失われた文明です。数年前まではサイハテ村に残っていたらしいのですが、魔王が襲来した際に消えてしまったらしいですから」」


壊したのはおそらく父、村長だ。

使えたはずの魔術師も報復を怖れて黙っているのだろう。

そして現在、実は娘のエリーが復活させている。


とは言えないので、全員目を逸らした。

てへ。


「き、危険なものと言ったらそうね、知らずに本を開くと火が噴き出てくるとか結構単純なものかしら」


「そんなもの何に使うのよ」


「焚き火?」


魔術書で焼く焼き芋を想像する。

持ち運びできる火種。案外野外活動に便利かもしれない。


「そういえば第五ということは5つも図書室があるの?」


「「もっとありますよ。学院の図書館は第一が一般生徒、第二が造形科向けの芸術関連の書物、第三が生物学中心の使役科と騎士科向けの書物、第四が治癒科の医学関連の書物、第五がこちらの魔術科向け、第七は歴史書関連の書物歴代のトロフィーや盾も飾ってあります。そして、第八は教員向けの高等書物、成績優秀者のみが使用できる自習室もあります」」


するすると説明をする双子だが、途中六が抜けていた。


「第六は?」

「「存在するかわかりません」」


「「第六は封印された本が存在する禁書庫と言い伝えられています。ですが、地図の何処にも載っていない為誰もどこにあるのかわかりません。知っている可能性があるのは学院長だけとされています」」


天井をご覧ください、と言われて私たちは図書室の天井を見上げた。


『七月の橋を渡る翼を手に入れ、封印された獅子の瞳に光を。さすれば高みにのぼる者にその扉は開かれるだろう』


この言葉はどの図書室にも書いてある。


「「この言葉だけが、第六の図書室へとつながる鍵になると言い伝えられています」」


「へーなぞなぞみたいね」

「でもエリーお姉ちゃんなら辿り着けてそう」


「ふふふ」


とりあえず笑って誤魔化しておく。


「そういえば、第三は騎士科向けなのに行かなかったね?」

「イベント中は使役科が使うからね。剣術科と仲が悪いのよ」


「そういえば、昔使役科にはすごく睨まれてた気がする」


ふとシータが思い出す。

鈍感さんかな?


「そういえばって。剣術科は討伐する側だから、間違えて自分の使役している魔獣を討伐されないように警戒してるの。どうしても対立しちゃうのよ」


あとシータは威圧するから魔獣が怯えちゃうから更に警戒されていたのでは、と思ったが口には出さないでおこう。


「「では次は魔術科の教室へご案内いたします」」


そう言って廊下に出ると、シータが突然エリーを庇うように前に出た。


ガキン、と木剣とは思えないほどの音が響く。


「久しぶりだな、エルダの息子よ」


「ガルドア先生、お久しぶりです」


生徒は先ほど全員倒したが、まだ教師が残っていたのである。

ガルドア先生はシータではなくエルダの息子と呼んだ。

何か因縁でもあるのだろうか。


戦闘が始まるかと思えば、どこからか冷たい空気が流れる。

双子とディナとヴィラはぶるっと震えた。


シータの威圧ではない。

エリーから、冷気が漏れ出ている。


「ヴァルト先生、お久しぶりです」


ガルドア先生の後ろから、もう一人先生が出てきた。

魔術科のヴァルト先生だ。

木剣からのガキンという音は彼の仕業らしい。


「ああ、元気そうで何よりだ。雪の結晶は大きくなったかね?」


何よりだと言いつつも全く喜んでいるようには見えない。


「すまないが、イベント参加は学院長命令でな。そして私達にもプライドというものがある。剣術科のイベントルールに則って、私も参加させて頂くことになった」


ヴァルト先生が木の剣を幾つも作り出す。


「エリー、君は特別に氷魔法を使うことを許可しよ「アイスソード!!」


現れたのは大きな大きな氷の大剣。


「ヴァルト先生、ありがとうございます」


そして更に生み出される小さな氷の短剣たち。

シータとガルドア先生の手も止まり、その姿を思わず凝視する。


「ちょうど私も参加したいなぁって思ってたところなんです」


にこり、と笑うエリー。

その瞳には光など宿っていなかった。

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