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サイハテの村人たちは勇者がいなくても平気なようです 〜ただしご近所は魔王城〜  作者: 青咲花星


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第22話 村長の考え

〜魔王城にて〜


「魔王様、ご報告が。サイハテ村の者がワイバーンを倒し、その流れ矢がアンドラス殿の羽を掠ったとのことで……」


「魔王様、村の反対側に嘆きの谷に居たとされる村人が化け物のように獣を狩り尽くしており、非常に危険な状態にあるとのことです」


「尚、隣に居た村人も突然歌い出したかと思えば聴いた者が発狂しはじめ……」


「魔王様、王都へ向かう際、地上から謎の突風に見舞われ1小隊進軍困難になったとの情報が。一瞬ですが緑色の服を纏った村人が走っているのが見えたとの事」


「狩りに出た村人たちが帰るかと思いきやたまには大物が食いたいと言い、引き返しはじめました。これにより領地に侵入してくる可能性が」


何かがおかしい。

魔術師エリーがいなければ平和になる筈ではなかったのか。

まるで飼い主がいなくなった途端いたずらをはじめる犬猫のようだ。


それも獰猛な。


「魔王様」


まだあるのかと、思わず睨んでしまう。


「今夜ですが、念の為結界を強化しておいた方がよろしいかもしれません」


「魔術師エリーの不在時にか?」


「おそらくですが、サイハテ村の村長が」


魔王の眉間に皺が寄る。


「以前あった大きな攻撃を調べたところ、2種類の魔法が組み合わさっていた事がわかりました」


いつも受けている氷の矢、そして青い炎の槍。


「何かの気まぐれで、攻撃してくるかもしれません」


______


〜サイハテ村長宅〜


「ふむ、エリー達は無事に王都へ着いたか」


イダーテからの報告を読む村長。

学院へは2日目に行くとの事。


「まだ引きずっているのだろうな」


子供達を学院に案内してくれと頼んだ時のエリーの顔を思い出す。

エリーは妻にそっくりだが、あの表情はおそらく私に似たのだろう。


村長は動かない表情筋をさすった。


とはいえ、旅路については全く心配していなかった。


娘が何やら転移魔法陣をこっそり使っているのはエリーの学院時代から薄々気がついていたし、隠すつもりがないのか、地下は転移魔法陣に占拠されていた。


戦争の火種になりかねない危険な行為であることは認識しているし、村の外ではちゃんと隠しているようだしとやかく言うつもりはない。


村長たちが王都へ行く時は荷車をその辺の魔獣を捕まえて全速力で走らせるか、エルダが引っ張るか、村長が魔術で動かしている。

村の者も、村長が1ヶ月かかるところを半月で帰ってくるのだから魔術で何かスキップする方法があるのだろうと気にしないので心配する必要もない。


魔獣に走らせるのが一番コスパが良いのだが、最近は何故か王都に行く道に魔獣が出没しなくなってしまった。


ちなみに、本来であればもっと早く行けるのだが昔学院時代にあらゆる魔獣を狩っていたことを知っている同級生から討伐依頼を受けて欲しいと頼まれたり、エルダがストレス発散に魔獣狩りがしたいと言い出したりして遅くなってしまうのだ。


「最近開発された魔導車も良いのだが、すぐ壊す輩がいるからな」


それに魔術が使える人間にしかあの車は動かせない。

魔力を充填して誰にでも使えるようになるといいのだが。


ふむ、と少し考え村長は裏口に出る。


「アースブロック、アイスブロック」


土でできた小さな台車を作り、魔力の溜めた氷を入れる。


「ウィンド」


小さな風を作り台車を動かす。

村長は魔法を止めたが、風はそのまま、今度は氷が溶けてそのまま進んで行く。


完全に氷が溶けたところで台車は進むのをやめた。


「ふむ」


もう少し強めに風を送り出すとどうなるだろうか。

そう考えているとおーいと村長を呼ぶ声がした。


「村長く〜ん」


シルが遠くのからぽてぽてと駆け寄ってくる。


「狩りから帰ってきたのか」


「うん、あのまま狩り尽くすと獲物も強く育たないよって言ったらやめてくれたからね」


とはいえ結構狩り尽くしていた。


「ところでワイバーンが出たらしいけど、誰も帰ってないようだね?」


「そのままはしゃいでドラゴンを討伐しに行ったらしい。イダーテに帰ってくるように伝言を頼んだ」


そっかードラゴンかーいるのかなー、なんてシルがのんびりと考えている。

昔、お前の妻エルダがドラゴンを倒したことがあるぞ、と言ったことがあるが信じてもらえなかったので黙っておく。


「シータたちは王都で楽しんでるようだね。よかったよかった」


「ああ、順調なようだ」


「でも村長くん、本当はエリーちゃんに行かせるつもりは全くなかったのにどうしたの?それにあの勇者くんがいるかもしれないのに」


どうしてか。

村長は前回王都へ行った時に会った勇者のことを思い出す。


出会い頭に舌打ちをされ、弱そうなただのおっさんじゃねーかと罵られ、村長だと分かった瞬間娘をくださいと懇願してきたあの小僧。


「叩き潰したかったが、それは娘のやることだと思ったまでだ」


「あそこで殴るかと思ってハラハラしたけどそんなこと考えてたんだねー」


「代わりに、いつか勇者がここにたどり着いたら盛大に出迎えてやろうと思う」


わあーとシルディールは苦笑いをする。


「ところでさっきから何を飛ばしているのだい?」


「魔導具の研究だ、常に魔術で動かさなくても自動で動く車にならないかと思ってな」


先程勇者の話をしてから、車とは思えないほどの速さでパァーンという音を出しながら森の彼方へ飛んでいく小さな車。


走るというよりもはや飛んで行ってる。


「魔王城を狙って攻撃を仕掛けているのかと思ったよ」

「魔王を倒すのは勇者の役目だ」


村長が魔術師なのはあくまでこの村を存続させる為であり、魔王を倒す為にいるのではない。


「それに倒したところで開拓だのなんだの面倒なことになる」


まるで魔王を倒せてしまうかのような口振りをする村長にシルディールは笑った。


「でも、君なら本当に倒せちゃいそうだねぇ」


勇者がここまで来られたら、考えよう。

村長はそう言って珍しく笑みを浮かべた。

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