初めてのキス
美結が家を駆け出して待ち合わせの公園に向かうと、先に陸がベンチで待っていた。
陸の顔を見て心が暖かくなり、ホッとするのを感じた。
美結は陸に会うなり、すぐ頭を下げた。
「本当にごめんなさい。心配もかけちゃって。」
「気にしないでいいから。寒くない?大丈夫?」
陸は美結に微笑みかけベンチにかけるよう促すと、着ていたファーのフリースを脱ぎ、美結の膝にかけた。
変わらない陸の優しさに美結の胸は熱くなった。
「ありがとう。クリスマスイブの時はまだ覚悟ができてなかったの。傷つけたよね。」
「大丈夫だよ。俺たちのペースで付き合って行こうよ。」
陸はそう言うと、美優の髪を優しく撫でた。
そして美優は一息吐くと、クリスマスイブに起きたもう一つのことを陸に告げた。
本当は彼氏に言うべきことではないのは分かっていた。
しかしの工の言うように、自分はもっと陸を頼りたいと思った。
「そっか。それは混乱したよね。でもさ、俺明人とは幼なじみだから。あいつの気持ちも知ってたよ。」
「え?」
「美優が明人と別れてから辛かったことも知ってる。だから、美優がいつか明人を選ぶ日が来てもしまってもそれは受け入れるよ。」
「そんな…。」
全てを知っていたという想定外の陸の反応に美結は戸惑った。
しかしそれ以上に陸が自信なさげに俯き、声が震えているのに不安になった。
陸は強がっているのだと、美結は思ったのだ。
「私が今付き合ってるのは陸だよ。そんなこと言わないで。」
「そんなこと言われたら俺また我慢…。」
美結は陸の言葉を遮るように、唇を塞いだ。
衝動的な行動をしてしまったことに恥じらい、美結は唇を離すと顔を赤らめ目を逸らした。
陸はそんな美結の両頬を優しく包み込みまた口付けを交わした。
しばらく幸福な時間を堪能すると、陸は明るい表情で美結に言った。
「年が明けたら、一緒にお参りに行こう?」
「うん。もう今年も終わるのかぁ。早かったなぁ。」
「俺は美結と付き合うことができて、本当に幸せな一年だったよ。大好き。」
素直すぎる発言に美結は顔が真っ赤になり、陸も照れてしばらく何も話すことができなかった。
しかし二人はくっつき、お互いの体温を感じながら幸福感をまた味わっていた。
「じゃあ、楽しみにしてるね。私も陸のこと大好きだから。」
しばらくして美結は陸の手に自分の手を重ねるとそう呟き、額にキスをした。
これが自分の答えなんだと思えた。
誰よりも一緒にいて安心して落ち着き幸福を感じる存在、それが恋だと信じてやまなかった。
そして二人は穏やかに一緒に新年を迎え、また変わらぬ幸せな毎日が待っていると思っていた。
しかし冬休み明け、平凡な二人のカップルに野次が入るなど誰も知る由もなかった。




