クリスマスイブの悪戯
美結はどこもあてもなく、雪の降る中ただ歩いていた。
そして自然と辿り着いてしまったのは、三年前に辛い思いをした場所だった。
「なんでここなの…。」
そう、三年前に明人から一方的に別れを告げられた公園だ。
三年も時間が経っているはずなのに、昨日のようにあの日のことのように明人の言動が蘇ってくる。
「辛っ。」
胸が締め付けられるように苦しくなり、美結はベンチに腰掛けた。
陸とは心穏やかにこれまで付き合ってきたつもりだ。
でも心の底ではまだ、明人が存在してるのだろうか?それともクリスマスだから?
頭の中でいろんな思いが錯綜していると、美結の目の前は影で覆われた。
「こんなとこで何してんの?」
「明人…。」
まるで運命の悪戯のようだった。
涼しげな顔で話しかけ隣にかけてきた明人に、美結は顔を合わせず立ち上がった。
「帰るの?なんでここにいたの?」
明人の質問に答えられる心の余裕は美結にはなかった。
そのまま無視して家に帰ろうとした時、美結の右腕は明人に掴まれた。
「俺は三年前のこと思い出して、ここに来ちゃったよ。ちょっと話さない?」
「…千花ちゃんとは今日会ってないの?」
「冬休み前だったかな?別れたんだよ。」
そうさらっと伝えた明人の発言に、美結の心臓はまた強く打ち付けるように鼓動が早くなった。
明人の言動に困惑して何も言えずに、俯きながらその隣に座った。
「美結こそ、陸とは会ってなかったの?付き合ってるんだろ?」
「…さっきまで会ってたよ。」
「そっか。せっかくまた美結と同じ高校で同じクラスになったのに、ろくに話せてなかったよな。なぁ、これ覚えてる?」
いつもより心なしかゆっくりと優しい口調で話す明人は、自分の首からネックレスを外して美結の前に掲げた。
美結はそれを見て、目頭が熱くなるのを感じた。
「どうして、それを明人が持ってるの?」
「ずっと、今でも大切なものだからだよ。」
それは三年前に無くなったはずの、二つのペアリングだった。
明人の言葉は美結を酷く動揺させ、返す言葉が見つからなかった。
呆然とする美結の頭を明人は撫で、話を続けた。
「親友の彼女に言うのはダメなことだって思ってる。でも俺やっぱずっと美結のこと忘れられないんだ。今でもめっちゃ好きなんだけど。」
明人の突然の告白に、美結はつい涙が一筋落ちたのを感じた。
今更都合の良い言葉にしか聞こえないし、本気かどうか信じられなかった。
しかし自分の心を揺さぶったのは事実だった。
「私、帰るね。」
「おい、美結待てよ…。」
美結は涙を拭うと、明人の腕を振り払い走って行った。
これ以上、明人から何か言われたら自分の何かが壊れそうで怖かった。
堪えていた涙が止まらず、美結は近所の神社の裏に隠れるように腰掛けた。
「なんで、今更そんなこと言うのよ…。」
美結は一人涙が枯れるまで泣き続け、クリスマスイブは幕を閉じた。




