苦い初恋
美結が明人を好きになったのは、物心ついた頃からだった。
幼い頃からいつも一緒にいる幼なじみから、好意を持つようになったきっかけは特になかった。
ただ何事にも好奇心旺盛で明るい明人の姿を、常に目で追うようになっていた。
そんな美結が心のうちに秘めていた恋心を、明人も持っていたことを知ったのは、中学一年のクリスマスイブの時だった。
明人の告白に涙するほど嬉しかった美結の二人は、付き合いを始めた。
毎日一緒に登下校し、週末には必ずデートをする、とても仲が良いカップルだった。
付き合って直ぐに訪れた美結の誕生日には、明人がペアリングを買って渡してくれた。
日々仲が深まっていく幸せな毎日を、美結はずっと続くと思っていた。
そんな二人に突然終わりが訪れたのは、付き合って一年になるクリスマスイブの夜のことだった。
クリスマスイブは昼に用事があるという明人に合わせ、夕方に二人で会い街で遊ぶ予定をしていた。
その日の天候は大雪で寒さに堪えながら美結は、待ち合わせ場所の公園で明人を待っていた。
しかし明人が訪れたのは約束の時間よりも二時間が経った時だった。
そして訪れるなり、明人は何も言わずに美結が右手の薬指に嵌めていたペアリングを外すと、二つのリングを近くの川辺に投げ捨てた。
呆気にとられて何も言えない美結に、明人は呟くように言い放った。
『別れよう。』
たったその四文字だけを告げて、美結を置いて明人は去って行った。
それから立ち尽くしていた美結は、偶然部活帰りの陸に出会った。
雪に塗れ震える美優に陸は自分の着ていたダウンコートをかけ、美結の家まで送って行った。
冬休みが明け、美結は傷心の気持ちが癒えぬまま登校した。
すると同じクラスだった明人が冬休み中に転校したことを知った。
親が離婚して、母方の実家に戻ったようだった。
ずっと大好きだった初恋の人に突然理由もなく別れを告げられた美結が気持ちの整理がつくまでに何年もの時間がかかった。
その間に現れた自分を一目惚れしたという工と浮ついた気持ちで付き合い、傷付けてしまったりもした。
そしてずっと自分を見守りながら想ってくれた陸とやっと本気で向き合い、順調に付き合っていた矢先で起きたのが今回のことだった。
美結は修学旅行が終わっても、明人達の痴話喧嘩の内容であったペアリングのワードが頭から離れなかった。
明人とお揃いで持っていたペアリングは明人自身の手で無くなってしまったため、明人が持っているペアリングは自分たちのものなはずはない。
自分には関係のないことだろうけど、まだペアリングを身につけているほど未練がある元カノがいるという事実は気になって仕方なかった。
そんな世間はクリスマスが近付いていた。
美結は陸とも上部は変わらない関係を築いていたが、内心は明人のことで落ち着かないままだった。
彼女でもない自分が本人に聞くわけにもいかず、さすがの工や陸にも話すことはできなかった。
悩みは解決しないまま学校は冬休みを迎え、クリスマスイブになった。




