喧嘩に巻き込まれて
美結が陸と付き合って、3ヶ月が経った。
美結達が付き合ったことを知った周りの友人は大祝福し、学年でもお似合いのカップルと噂された。
そんな美結達は幼なじみ時代とあまり変わらない穏やかな付き合いをしていた。
陸は代替わりで部活の部長になったとでより土日も多忙になり、二人がゆっくり話すことができるのは登校中だけだった。
「ごめんね、付き合ったのにどこにも連れて行けなくて。」
「いいのいいの!バスケは今しかできないじゃなあた。」
陸は付き合ったのに何も楽しい事をさせてあげられてないことをいつも嘆いていた。
しかし美結は今の関係に不満を感じることはなく、陸の部活での活躍を一番に応援していた。
「本当、修学旅行が楽しみすぎる。」
そんな美結達は離島リゾートへの修学旅行旅行を控えていた。
旅行の中に繁華街での自由行動時間が設けられており、二人はそこでデートをする予定だった。
どこに行って何をするかが最近の1番の話題で、少しずつ計画を練っていたのである。
「晴れるといいよね。てるてる坊主でも作ろうかな?」
「美結らしい、そういうとこ可愛いよなほんと。」
天然で子供っぽい美結の言動に、陸は癒され微笑み合った。
そんな平凡なカップルの初めてのデートでまさか、トラブルに巻き込まれるだろうと誰が予想できていただろうか…。
修学旅行は美結の願いも叶い、晴天だった。
三泊四日で予定されている旅行の二日間はクラスごとに観光に充てられた。
そして三日目、無事に自由行動時間はやって来た。
「陸!めいっぱい楽しもうね!」
「うん。にしてもやっぱり人多いね。逸れないように注意しよう。」
そう言ってさり気なく、陸は美結の手を握った。
美結は久しぶりに恋人らしいをことをするのに、照れて顔を紅らめた。
二人は珍しいお土産屋を回って見てから、少し奥まったところにある地元のカフェに入った。
雑誌に載ってたりと特別人気な場所ではないがそれなりに美味しいと好評で、何よりゆっくりできるようだった。
名物グルメを堪能しながら、いつものようにのんびりと他愛ない話をしていた。
そして小一時間が経った頃、二人のよく知る人物達が店に入って来た。
「なんか地味じゃね?」
「いいじゃん。なんか疲れたんだもん。」
「俺はパーっと楽しみたかったけどなぁ…。」
なんと隣の席に、テンションが低い千花と不機嫌そうな明人のカップルが座ったのだった。
半個室になっているため、美結達が隣にいること二人は気付いていないようだった。
美結と陸は顔を見合わせ、どちらから言うわけでもなく店から出る支度を始めた。
そんな美結達の居心地の悪さなど知らず、明人達はなんと喧嘩を始めたのである。
それは自由行動での明人の自分勝手で派手な行動に対する千花の指摘から始まり、千花のお土産やグルメのセンスなど…どうでもいい言い合いだった。
しかし二人の喧嘩はヒートアップしていき、なんだか美結達も店から出るタイミングを失っていた。
「あのさ、今だから言えるけど。元カノからもらった指輪、ネックレスにつけて隠れて持ってるのやめてくれない?」
ヒートアップした喧嘩ついでに千花が何気なく言った明人への言いがかりを聞いた美結は、つい声が漏れて胸の鼓動が早くなった。
「知ってたのかよ…!」
「嫌なの。やめて欲しい。」
「これは大切なものだから。千花にとやかく言われたくない。」
「なんですって!!」
千花は大声を上げ、テーブルを勢いよく叩くと席を立った。
そしてそのまま店を出ようとし、明人がその腕を止めた目の前によく顔を知った二人がいたことに気付いた。
「あれ…お前達いたの。」
見つめ合った、四人の表情は固まった。
先に口を開いたのは、この場で一番冷静で大人な陸だった。
「偶然だね。でも俺たち帰るから。ごゆっくり。」
しかし陸でも戸惑ったようでついチグハグな言葉を放ち、美結の手を取り即座に会計をすると店を出た。
「なんか嫌なところに遭遇しちゃったね。」
「うん…。」
美結はそう言うと、それからあまり言葉を発さなかった。
頭の中では、明人が持っている元カノからもらった指輪のことがずっと気になっていた。
それは美結に心当たりがあったからだった。




