花火大会の奇跡
美男美女、明人と千花のカップル誕生は校内に瞬く間に広がった。
美結の明人への未練を薄々感じ取っていた工以外の友人達も、美結を沢山励ましてくれた。
高校生活は夏季休暇を迎えようとしていた。
美結は大分元気になったが、校内で時々二人きりで話し込む明人達を見なくて済むのは本当に救われると思った。
終業式の朝、美結はいつも通りすっかり足も回復した陸と和やかに登校していた。
そして自転車を置き、校舎に向かう途中陸は美結に言った。
「デートの代わり、誘ってもいい?」
「ん?代わり?」
陸は回復して間もなく中体連などで、土日も多忙な毎日を送っていた。
美結がまたすっかり忘れていた心ときめくその言葉に、胸が高鳴った。
「来週末の花火大会、一緒に行きたいんだ。」
「花火大会…。」
「よろしくね!」
陸は珍しく一方的にそう言うと、走って校内に去って行ってしまった。
花火大会は美結の地元で行われる、小規模なものだった。
小さい頃から家族で行っていて、大きくなってからは幼なじみ同士で行っていた夏の思い出だ。
しかし最近は受験や家族旅行で行ってなかった。
『最後は中2の夏、明人と行ったんだっけ。』
ちょうど付き合って半年が経ち、お互いまだ熱い恋情に溺れていて頃だ。
今となっては辛い思い出であった。
今年は陸との楽しい思い出に塗り替えようと誓い、美結は深く考えずに夏季休暇を迎えたのであった。
しかし夏季休暇に入っても、美結の日常はあまり変わらない。
特に今年は高校受験でピリピリしてる妹がいる家の中にはいられず、毎日友人達と遊んでいる。
工を除く友人達は、美結と陸の花火大会デートの約束に喜んだ。
そして女子組で毎日のように買い物に出かけ、新しい浴衣やアクセサリーを選んで回った。
そして本番も美結はおしゃれでセンスの良い海の指示の元、器用な日向が着付けからヘアメイクをしてくれ、すっかり気合が入ってるように粧し込んでしまった。
「「楽しんできてね。」」
海と日向は満面の笑顔で、美結を送って行った。
張り切りすぎた自分の姿に照れながら、美結が待ち合わせ場所に行くと陸の姿に息を呑んだ。
なんと浴衣を着ており、長身の陸が着こなすその姿はあまりに魅力的だった。
「お待たせ。」
「待ってないよ。美結も浴衣で来てくれたんだ。」
「変じゃない…?」
着飾りすぎてしまった姿に美結は恥ずかしくて堪らなかった。
しかし陸は優しく微笑むと、素直に言うのだった。
「すっげぇ、可愛い。」
美結は顔が真っ赤になり、陸の少し後ろを歩いた。
登校の時とは違って何を話せばいいか分からなくなった美結に、陸は他愛無い話題を沢山話してくれた。
そして出店を回りお互い食べたいものを買い込むと、少し早めに花火が見える川辺へと移動した。
ピクニックのようにシートを広げて二人隣り合わせで座り、美味しい出店グルメを頬張った。
時間を経つのはあっという間で、暗くなり花火が上がった。
二人は歓声を上げながら、綺麗な花火に魅了された。
始めこそ緊張していたが、幼い頃から一緒にいる陸の隣にいるのは心地よく、美結は花火大会を楽しんでいた。
そして花火も終盤にかかった頃だった。
フィナーレに向けてアナウンスがされている中、陸は美結に話を始めた。
「美結、怪我した時は看病して元気付けてくれて本当にありがとう。これさ、最初に渡そうと思ってたんだけど恥ずかしくて渡せなかった。ささやかだけど、気持ちとして受け取って。」
陸はそう言うと、ギンガムチェックの紙袋を美結に渡した。
早速中を開けると、ハートのパールが付いたブレスレットが入っていた。
「可愛い。ありがとう。」
美結がそのアクセサリーの可愛さに微笑んでいると、陸はその姿を見ながら呟いた。
「美結、俺ずっと美結のことが好きだった。付き合って欲しい。」
「えっ…。」
美結が顔を上げると、陸の頰は紅くなっており二人は真っ直ぐ見つめ合った。
その時、最後の花火が始まった。
美結は動機がする胸を押さえながら、夜空を眺めた。
「急にごめんね。返事はいつでも良いから。」
「うん。」
花火が終わってから、陸はそう言って微笑した。
想定外の告白に正直戸惑っていた美結は、胸を撫で下ろした。
しかしそれから陸が話題を振り別のことを話しても、美結の頭にはなかなか入っていかなかった。




