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文化祭で起きた悲劇

そして夏休み直前、文化祭の幕が明けた。


「絶対、メイド服は着ないから!」


美結はメイド服を着ることに最後まで拒んだ。

家族も来るため妹からもどれだけ揶揄われるか分からない。


しかし美結は本人の自覚はないがクラスのマドンナ的存在で、文化祭の客寄せには欠かせなかった。


「カーディガン着用可、客相手なしはどう?」

「それなら仕方ない…。」


日向の説得で、なんとか美結にメイド服を着せることに成功した。

工もその条件には内心安心し、影から美結に悪い虫が付かないように見張っていた。


そして美結は空き時間に、いつものメンバーで陸のクラスの出し物を見に行った。

陸のクラスでは本格的なお化け屋敷をしていた。

暗闇の中でイチャイチャする海達カップルを筆頭に、怖いものが苦手で日向にくっつく美結、四人の姿をつまらなそうに見つめる冷めた工の順番で入っていった。


「きゃー、まじ無理ー。」


お化けが出てくる前から、装飾にさえ恐怖を感じていた美結は泣きそうだった。

しかし美結と日向の前に現れたのは、怖いよりか可愛いお化けばっかりで笑ってしまうお化け屋敷だった。

それを裏で陸が指示していたことを、工は見抜いていた。


「陸、すっかり足も良くなったんだね。楽しかったよ。」

「美結達メイド喫茶も好評らしいじゃん。俺も美結のメイド見たかったな。」


幼なじみ二人の穏やかな会話を、工は裏から尋常じゃないほど敵視しながら聞き入っていた。

明らかに下心を感じる陸の発言に突っ込みたいのを懸命に抑えた。



こうして二日間開催された文化祭は、穏便に終わる予定だった。

最終日の夕方は全校生徒で、グラウンドにてキャンプファイヤーをする。

美結は友人達とグラウンドに向かう途中で、カーディガンを置いてきた事に気付いた。

そのため工が一緒に取りに行く事になった。


「え、あれ…。」


教室に向かうと、誰もいないはずの部屋に二人の男女の姿があった。

何やら話し込んでる姿に美結は廊下の隅に隠れ、工にも無理やりそうさせた。


「早く取って、グラウンドに戻ろ…」

「ちょっと黙ってて。」


教室にいたのは明人と千花だった。

文化祭委員として終始行動を共にしていた二人が一緒にいるの必然だった。

しかし嫌な予感がした美結はそのまま工の口を紡ぐと、二人の会話が聞こえてきた。


「好きです。付き合ってください。」

「いいよ。」


まさかの告白現場、しかもカップル誕生の場面に居合わせてしまった美結の目の前は真っ白になった。

倒れそうになった美結を工が支えた。


「気にするなよ。よくあるやつじゃん?文化祭マジック的な。」

「いや本気なやつだよきっと。あ、やばい。」

「お前達何してんの?盗み聞き?」


気が付くと、目の前には出来立てホヤホヤのカップルの姿があった。

柄になく千花は顔を真っ赤にして、微笑んでいる。


「忘れ物だよ!俺たちなんも聞いてないから!」


さすがに慌てたバラバラの嘘をついた工が美結を急かさせて教室に忘れ物を取りに行き、颯爽とその場を離れた。



そして二人が見えなくなって立ち止まった工は、隣にいた美結が大粒の涙を流してグシャグシャの顔をしている事に気付いた。


「工、もう無理。」


人気のない裏庭のベンチで、美結は誰にも言えなかった千花に宣戦布告されたことを工に伝え、後悔していることを告げた。

工はそんな美結を責めることなく泣き止むまで背中を摩り、寄り添っていた。


「ありがとうね。工。」

「美結。辛いよな。今日はすっぽかして、カラオケでも行こうぜ?」


そう軽いノリで言う工に、美結は涙を拭い満面の笑顔を見せた。

最悪の場面に、なんでも話せる親友が隣にいてくれて本当に良かった。

美結の傷ついた心はなかなか落ち着かないが、二人は仮病を理由に早退し、夜遅くまでカラオケで発散した。


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