天秤にかける思い
季節は移ろい、梅雨の真っ只中だった。
もうすぐ高二の中間テストが始まろうとしていた。
「今日カラオケ行かなーい?」
「ごめん、今日は陸の家で一緒に勉強するんだ。」
「陸デーだったのね。それは残念残念。」
「てか二人とも勉強してる?」
美結はあれから部活ができず落ち込んでいる陸の家に度々訪れていて、最近は一緒に勉強をしていた。
もちろん空もくっつくようにいるから決して二人にはならないのだけれど。
友人達は美結が構ってくれないことにすっかり慣れてしまっていた。
いつ二人がくっつくのか、裏でかけをして楽しんでいるくらいだった。
「はい、ではホームルームです!今日は文化祭委員から…。」
美結は机に項垂れ、雨が降り続ける窓を見ていた。
そしてその雨の音を聞きながら眠ってしまった。
「ではこの題材で決まり!ホームルームは解散します。」
しばらくしてホームルーム解散の声で美結は目を覚ました。
虚な目で黒板を見ると、来月行われる文化祭の題材の名前が書いてあった。
「メイド執事喫茶!?なんて破廉恥な。」
美結は驚き、つい声を上げてしまった。
その発言を聞いていた、後ろの席の工は爆笑した。
席替えをしたが、腐れ縁なのか仕組まれたのか工はまた美結の後ろの席だった。
「破廉恥ってまじうける。」
「私絶対絶対メイド服なんて着ない。」
「みんな強制らしいよ。」
意外と恥ずかしがり屋な美結は、自分が寝ている間に決まった決定事項に絶望した。
そんな美結に工はおでこに触れると言った。
「熱はないか。お前、疲れてるんじゃん?勉強しすぎで。」
「それは…。」
美結は陸と一緒に勉強しながらも、優秀な陸に教えてもらってばかりでいたため、自宅に帰ってからも寝る間も惜しんで懸命に勉強していたのだった。
いつも美結の体調の変化にはなんだかんだ一番近くにいる工が最初に気付いてくれる。
「ミルクティー買ってくるから、ちょっと待ってろよ。」
「いや!私も一緒に買いに行く!」
工の気遣いに美結は満面の笑みで着いて行った。
工は大好きな人の可愛いすぎる表情照れて、つい赤くなってしまった顔を隠すように俯いて歩いて行った。
そして中間テストが終わり、陸もギブスが取れて部活復帰することとなった。
美結は少し寂しく思ったが、陸の順調な回復に安心した。
まだ一緒に登校はできないが、部活復帰する前の休日に美結は陸に近くの公園に呼び出された。
二人は会うと、懐かしいとブランコに乗って遊んだ。
「美結、怪我してる間元気つけてくれてありがとうな。」
「いいよ。むしろ勉強教えてくれてありがとうね。」
美結こそ陸のおかげで、私的にとんでもなく素晴らしい成績を収めることができた。
「怪我が治ったら、今度こそデートに行かない?」
陸のその一言に、美結の心臓が高鳴った。
中間テストの勉強に追われてつい忘れていた。
美結はブランコを漕ぐ足を止め、高鳴る鼓動を抑えながら言葉を返した。
「そ、そうだね。」
意識してついろれつが回らなくなってしまった。
そんな美結の隣に、ブランコを漕ぐのをやめた陸が立った。
そして耳元で何か話そうとしていた時…。
「あれ、お前ら何してんのー?」
「「明人!!」」
絶妙なタイミングでなんとも気まずい相手が現れた。
顔を赤らめ俯く二人を見て見ぬ振りをした明人は、懐かしい地元を一人サイクリングしていたようで一人で世間話を始めた。
しかし美結はなかなか平常を保てなかったため、家族との約束があると嘘をついて先にその場から出て行った。
陸と明人との存在が、天秤のように美結の心の中で揺れていた。




