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41話

街へ戻った俺たちは、宿の部屋に入るとすぐに荷物を置いた。


「今日は色々ありましたね」


「ああ」


 俺は椅子に座り、ポケットから黒い石を取り出した。


 机の上に置く。


 何の変哲もない石。


 それなのに、これが隠し扉を開けた。


 そして、あの地下通路の先には森へ続く出口があった。


「これ、やっぱり普通の石じゃないよな」


「私もそう思います」


 リナが石を見つめる。


「ですが、魔力を感じるわけではありません」


「そうなんだよな」


 俺も何度か触ってみた。


 魔道具のような反応はない。


 それなのに、特定の場所では鍵として機能する。


「不思議だな」


「はい」


 しばらく石を眺める。


 すると――。


 また、あの音がした。


 ――ピッ。


「……!」


 俺は顔を上げた。


「今の、聞こえた?」


「何がですか?」


「音」


「音?」


 リナは周囲を見回す。


「何も聞こえませんでした」


「……そうか」


 やっぱり俺にしか聞こえていない。


 俺は石を手に取る。


 すると、ほんの一瞬だけ。


 頭の中に文字のようなものが浮かんだ。


《――――》


 だが、すぐに消える。


「……なんだ?」


「レオン様?」


「いや、何でもない」


 今見えたものを説明しようとして、やめた。


 まだ自分でも理解できていない。


 俺は石を机の引き出しへしまった。


「今日はもう休もう」


「はい」


 リナも頷いた。


 その夜。


 俺はベッドに横になりながら、今日の出来事を思い返していた。


 地下室。


 黒い石。


 隠し通路。


 森へ続く出口。


 そして、あの男。


 行方不明者たちは、あの場所と何らかの関係がある。


 それは間違いない。


 だが、一番気になるのは別のことだった。


 あの音。


 そして、頭の中に浮かんだ文字。


 俺は目を閉じる。


 しばらくすると、眠気がやってきた。


 翌朝。


「レオン様」


「ん……」


「起きてください」


「……もう朝か」


「はい」


 俺は起き上がる。


 朝食を済ませたあと、俺たちは宿を出た。


 今日は森へ向かうつもりだった。


 昨日見つけた足跡。


 あれを辿ってみる。


「昨日の足跡、覚えてますか?」


「ああ」


「森の奥へ続いていました」


「そこを調べよう」


 南門へ向かう。


 昨日までとは違う。


 目的地が決まっている。


 門を抜け、森へ入る。


 しばらく進むと、昨日見つけた場所へ到着した。


「ここです」


 リナが地面を指差す。


 足跡が残っている。


 ただ、昨日より少し分かりにくくなっている。


「雨でも降ったら消えてたな」


「今日は天気が良くて助かりました」


 俺たちは足跡を追い始めた。


 森の奥へ。


 昨日までほとんど入ったことのない場所だ。


 木々が増え、道らしい道もなくなる。


 それでもリナは迷わない。


「こっちです」


「分かるのか?」


「足跡だけではありません」


 リナが周囲を見る。


「枝が折れています。それと、草が倒れている」


「なるほど」


 【死影】になったことで、こういう痕跡も以前より正確に見つけられるようになっているらしい。


 俺たちはさらに進む。


 しばらくして。


 リナが突然、足を止めた。


「……待ってください」


「何かいる?」


「はい」


 リナが静かに周囲を見る。


「前方に動物がいます」


「どれくらい?」


「一匹です」


 俺も目を凝らす。


 木々の向こうに、小さな影が見えた。


 狼だ。


 こちらを見ている。


 だが、逃げる様子はない。


「魔物か?」


「分かりません」


 狼が一歩近づく。


 俺は身構える。


 だが、狼は攻撃してこなかった。


 むしろ、俺たちを確認すると森の奥へ歩いていく。


「……なんだ?」


「追いますか?」


「少しだけ」


 狼を追う。


 すると、少し開けた場所に出た。


 そこには古い石碑が立っていた。


「石碑?」


「はい」


 表面には何か文字が刻まれている。


 俺は近づく。


 文字を読もうとした、その瞬間。


 ――ピッ。


「……!」


 まただ。


 今度は黒い石を持っていない。


 それなのに聞こえた。


 俺の頭の中に、昨日と同じ音が響く。


 そして。


 石碑の文字が、一瞬だけ別の文字に見えた。


《認証――》


 そこで消える。


「……」


「レオン様?」


 リナが俺を見る。


「今、何かありましたか?」


「……いや」


 俺は石碑を見る。


 もう普通の文字に戻っている。


「ちょっと気になるだけだ」


 俺は石碑に手を触れる。


 何も起こらない。


 ただの古い石碑。


 そう見える。


 でも。


 俺には分かっていた。


 これは偶然じゃない。


 昨日の黒い石。


 地下の隠し扉。


 そして、この石碑。


 全部が何かで繋がっている。


 そして、その何かは――。


 俺の《チャット》やAI、【????】とも関係しているのかもしれない。


 まだ、確信はない。


 だからこそ。


 今は調べるしかない。


「リナ」


「はい」


「この周辺を調べよう」


「分かりました」


 俺たちは石碑の周囲を調べ始めた。


 森の事件は、思っていたよりもずっと深いところまで続いている。


 そして俺自身の力についても。


 少しずつ、何かが動き始めていた。

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